日本公衆衛生雑誌
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59 巻 , 10 号
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原著
  • 春山 康夫, 武藤 孝司, 中出 麻紀子, 山崎 章子, 樽見 文子
    2012 年 59 巻 10 号 p. 731-742
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    目的 2008年,埼玉県草加市は「特定健康診査•特定保健指導」を開始した。本研究は,特定保健指導対象者における保健指導利用後のメタボリックシンドローム(MetS),その関連指標および生活習慣の改善効果を検討することを目的とした。
    方法 研究デザインは準実験研究デザインを用いた。対象者は,2008年度に草加市特定健康診査を受診し,特定保健指導レベルによって階層化された積極的支援対象者500人と動機づけ支援対象者1,483人とした。両群のうちそれぞれ72人,275人が特定保健指導の利用を希望した。特定保健指導では初回面接に加え 6 か月の介入プログラムを行った。対照群は特定保健指導の非利用者とし,全員に MetS に関する情報を提供した。肥満および MetS の変化については,共分散分析(ANCOVA)と多変量ロジステック回帰分析を用いて検討した。
    結果 積極的支援と動機づけ支援介入群のうちそれぞれ62人(86.1%)と266人(96.7%)が介入プログラムを終了し,1 年間の追跡後,特定健康診査を受けたのはそれぞれ41人と210人であった。ベースライン値,性および年齢を調整したところ,積極的支援介入群における腹囲(−3.1 cm,P<0.001),BMI(−0.8 kg/m2P<0.001),体重(−2.3 kg,P<0.001)と HbA1c(−0.18%,P=0.016),動機づけ支援介入群における腹囲(−1.3 cm,P=0.001),BMI(−0.5 kg/m2P<0.001),体重(−1.2 kg,P<0.001),収縮期血圧(−2.4 mmHg,P=0.018),および拡張期血圧(−1.8 mmHg,P=0.005),HbA1c(−0.06%,P=0.025)が対照群と比較して有意に多く低下していた。また,1 年後に MetS 該当者から非該当者又は予備群,および予備群から非該当者になった者の割合は,対照群と比較して特定保健指導介入群全体(オッズ比:1.41,95%信頼区間:1.05–1.90)と動機づけ支援介入群(オッズ比:1.39;95%信頼区間:1.00–1.94)において有意に高かった。
    結論 積極的支援および動機づけ支援によって,特定保健指導介入群の MetS 改善に一定の効果が得られたことが明らかとなった。
  • 桜井 良太, 藤原 佳典, 深谷 太郎, 齋藤 京子, 安永 正史, 鈴木 宏幸, 野中 久美子, 金 憲経, 金 美芝, 田中 千晶, 西 ...
    2012 年 59 巻 10 号 p. 743-754
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    目的 運動充足感の違いが高齢者の心身機能に与える影響と,運動を中心とした介入終了後の運動充足感による介入効果の違いを明らかにすることを目的とした。
    方法 介入研究に参加した地域在住高齢者260人(平均年齢±標準偏差=70.4±6.0歳)を解析対象とした。事前検査時に主観的な運動充足感と身体活動量(仕事などの生活活動と運動習慣から定義)を聴取し,それぞれを 2 水準(低•高)にまとめ,各運動充足感間における測定変数を多変量分散分析を用いて検討した。また,運動介入群(88人,平均年齢±標準偏差=70.3±6.2歳)の介入終了時の運動充足感を悪化群(介入後においても低運動充足だった者)と維持•改善群(介入後に高運動充足感だった者)に分け,これらの群を独立変数とした反復測定分散分析を行った。なお,介入は週 2 回,3 か月間の複合プログラム(運動•栄養教室,温泉入浴)を実施し,事後調査を行った。事前•事後検査時には精神的健康状態(WHO–5 得点),健康関連 QOL(SF–8),精神的自立性を質問紙によって聴取し,運動機能の検査(握力,歩行速度,開眼片足立ち,Timed Up & Go test)を行った。
    結果 運動充足感を独立変数とし,身体活動量を共変量とした多変量分散分析の結果,BMI,握力,最大歩行速度,WHO–5 得点,SF–8 下位 8 項目に有意な差が認められ,すべての項目において,高充足群は低充足群に比べ,値が良好である傾向が示された。また,各身体活動量群内での比較においても同様の傾向が認められた。介入終了時の運動充足感を独立変数とした反復測定分散分析の結果,通常•最大歩行速度,TUG,SF–8 下位 1 項目に有意な期間の主効果が認められ,BMI,WHO–5 得点,SF–8 下位 6 項目,精神的自立性尺度に有意な群の主効果が認められた。
    結論 本研究から,身体活動量にかかわらず,主観的な運動充足感が高い高齢者ほど精神•心理的健康度が高いことが明らかとなった。また,運動を中心とした介入後に運動充足感が低い者においても,身体機能に対する一定の改善が認められたが,介入終了後に高運動充足感を有している者との間には,精神•心理的健康度に有意な差があることが示された。以上の結果は,運動充足感を得られる運動が高齢者の健康増進に寄与する可能性を示唆するとともに,健康教室などにおいて,運動充足感の向上に主眼を置いた,個々の能力•目的に応じた介入内容や,運動充足感の評価が有効であると推察される。
公衆衛生活動報告
  • 伊藤 正寛, 江口 菜未子, 石橋 るみ子, 山田 祥子, 松村 貴代, 鍋田 淑華, 圡井 渉, 松井 裕佐公
    2012 年 59 巻 10 号 p. 755-761
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    目的 京都市の結核対策事業を検証し,根本的な対策を遂行することにより,結核罹患率をさらに低減することを目的に平成19年10月に京都市結核対策推進プロジェクトチーム(PT)を発足させた。平成20年から22年までの公衆衛生活動としての PT の取り組みを報告する。
    方法 PT は平成24年までに結核罹患率を18以下,喀痰塗抹陽性の肺結核罹患率を 8 以下に低減することを基本目標として設定し,目標を達成するための具体的対策を策定した。PT の,1)発生動向検討グループは結核登録者情報システムの精度管理と入力率の向上,2)接触者健診検討グループは接触者健診システムの利用の徹底と発生直後,1 年後,2 年後の接触者健診受診率向上,3)DOTS(Directly Observed Treatment, Short-course)•コホート検討グループは DOTS 実施率,コホート法による治療成績判定における成功例の割合の向上,脱落•失敗例の割合の低下を目標として設定した。PT は各京都市保健センターにおける結核対策の進捗状況を把握し,不十分な場合はその原因を解明し改善のための提言を行った。
    結果 PT 活動介入後は結核対策評価指数のうち結核罹患率,培養検査結果•薬剤感受性入力率,治療成功率,脱落•失敗率は改善傾向を示した。
    結論 PT 方式は公衆衛生学的な結核対策を推進するために有効であることが示唆され,今後も PT 方式を継続して取り組む予定である。
研究ノート
  • 植村 直子, マルティネス 真喜子, 畑下 博世
    2012 年 59 巻 10 号 p. 762-770
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    目的 在日ブラジル人妊婦が,妊娠から出産までの日常生活をどのように過ごしているのか,日本の保健医療システムの中で,どのような点に戸惑いや困難を感じているのかを調査し,在日ブラジル人妊産婦の保健医療ニーズを考察した。
    方法 対象者は A 県在住で,日本語理解が不十分で,日本での出産が初めてであるブラジル人妊婦10人とした。2007年 8 月から2009年 7 月に,研究者と通訳者が対象者の妊婦健診への同行,および家庭訪問によるフィールドワークを実施した。分析は,フィールドノートより各対象者の妊娠•出産についての思いや考え,日常生活の様子,保健医療の場面での戸惑いや困りごとに関する記述からラベルを作成し,意味の共通するものをグループ化する作業を繰り返しカテゴリー化した。
    結果 対象者の年齢は20歳代が 8 人,30歳代が 2 人で,在日期間は 3 年未満が 8 人,10年未満が 2 人であった。出産経験は「なし」が 8 人,「あり」が 2 人であった。労働状況は10人とも妊娠後期までに退職し,経済状況は夫の収入のみでは生活は厳しい状況であった。同居家族は「夫」が 6 人,「夫,子ども」が 2 人,「夫,親」が 2 人であった。家族の支援状況は,実際に身近に手伝ってくれる者がいるのは 6 人で,友人等の交流状況は,退職後は10人とも「なし」であった。
      日常生活の様子や保健医療場面での困難では,4 つの大カテゴリー:I. 身内との支えあいは強いが,友人や近所との日常的なつきあいはあまりない,II. 過酷な仕事により,不規則な生活を送らざるを得ず,体に負担がかかっている,III. 日本での出産に関する情報が十分得られておらず,理解できていないことによる不安がある,IV. 母国と違うシステム,習慣に戸惑う,に整理された。
    結論 在日ブラジル人妊婦の日常生活は孤立しがちで,不規則な生活状況であった。保健医療の場面では,日本での妊娠•出産に関する情報を十分に得られておらず,体重増加など日本とブラジルの基準の違いに戸惑っていた。こうした在日ブラジル人妊婦の生活状況を理解し,産後孤立させないことを見越した妊娠期からの関係の形成や,ブラジルの情報を踏まえた対応が求められる。また,市町村や保健所,産科•小児科医療施設,国際協会や民間支援団体,雇用者(企業)などが協力し,通訳の配置,対訳表•異文化理解のためのマニュアル普及やセミナー実施,相談日を実施するなどの支援体制づくりが望まれる。
  • 横山 美江, 村井 ちか子, 宮下 茜, 辰巳 朋美, 藤岡 弘季
    2012 年 59 巻 10 号 p. 771-780
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    目的 本研究では,出生人口に基づいた乳児健康診査のデータベースの分析から,授乳期の栄養方法とその関連要因を分析し,かつ栄養方法の違いによる母親の育児への思いを明らかにすることで,今後の地域母子保健における効果的な支援のあり方を検討する基礎的資料とすることを目的とした。
    方法 本研究で用いたデータベースは,大阪市福島区において2005年 4 月から2009年12月までに 3 か月児健康診査を受診した児の健診データのうち,個人情報をすべて除外したデータファイルである。分析に用いたデータは,乳児に関する要因として,受診時の栄養方法(母乳栄養,混合栄養,人工栄養),在胎週数,胎児数,出生体重,保育器の使用状況,出生年等を用いた。さらに,母親に関する要因として,計画妊娠の有無,妊娠中の喫煙状況と飲酒状況,婚姻状況,妊娠高血圧症候群の有無,出産時の母親の年齢,就労状況,経済不安の有無,育児協力者の有無,育児相談者の有無,母親の子どもとの生活への思い,ならびに子育て中の母親の気分を使用した。
    結果 2005年 4 月から2009年12月までに,2,552人の乳児が 3 か月児健康診査を受診した。このうち,受診時の栄養方法について不明な者61人,および出生後 6 か月以降に受診した者15人を除く,2,476人のデータを分析対象とした。3 か月児健康診査を受診した児の栄養方法を分析すると,全体の56.8%が母乳栄養による授乳,28.7%が混合栄養による授乳,14.5%が人工栄養による授乳であった。授乳期の栄養方法は,出生年と有意な関連が認められ,出生年が近年になるほど,人工栄養の割合が低くなっていた。また,これらの栄養方法は,双胎出生,出生体重,母親の妊娠中の喫煙状況,ならびに母親の出産時の年齢と有意な関連が認められた。さらに,混合栄養または人工栄養による授乳を行っている母親では育児が楽しいと回答した者が88.4%であったのに対し,母乳栄養による授乳を行っている母親では93.4%と,母乳栄養による授乳を行っている母親に育児が楽しいと回答する者が有意に多かった。
    結論 本調査結果から,出生後 3 か月から 5 か月における乳児の授乳はおよそ57%が母乳栄養による授乳,15%が人工栄養による授乳であり,さらに人工栄養による授乳は年々減少していることが明らかとなった。母乳栄養による授乳を行っている母親は,育児が楽しいと回答する者が有意に多いことが判明した。一方,これらの栄養方法は,双胎出生,出生体重,母親の妊娠中の喫煙状況,ならびに母親の年齢との関連が認められ,授乳指導を効果的に行うためにはこれらの要因を考慮した上で指導する必要があることが示された。
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