日本公衆衛生雑誌
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公衆衛生活動報告
小学校での2つのノロウイルス胃腸炎の集団発生事例の記述疫学報告
木村 博子仁多見 謙一郎水口 藍
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2012 年 59 巻 2 号 p. 101-111

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抄録

目的 ノロウイルスはしばしば大規模な集団発生を起こすが,感染源が明確にされないことも多い。最近,ノロウイルスによる胃腸炎の集団発生におけるウイルスによる環境汚染の証拠が報告されてきた。本研究は,背景に環境汚染が示唆されるノロウイルスによる胃腸炎集団発生の 2 つの事例に遭遇したので,これら 2 つの集団発生に関する記述疫学の結果を報告する。
方法 ノロウイルスによる急性胃腸炎の集団発生が2009年の 3 月と12月に同一小学校で起きた。本研究では,集団発生の曝露原因を,事例 1 では,第一に児童や教職員が給食を摂取として,第二に S 校舎 2 階中央への立入りとに区分して想定し,事例 2 では,T 校舎 2 階あるいは 3 階への立入りとして想定し,それぞれの有無と累積罹患率を比較した。リアルタイム PCR 法による便検体のノロウイルス検査を行い,さらに陽性検体について遺伝子の相同性検査,遺伝子型検査を実施した。
結果 有症状者の便検体のノロウイルス遺伝子型は,事例 1 が GII/9 型,事例 2 は GI/4 型であり,両事例とも,発症者の遺伝子相同性は100%一致した。事例 1 では,給食摂取の有無にかかわらず,また,給食摂取が無い児童の中で比較しても,S 校舎 2 階中央の区域の 3 室に胃腸炎発症者が局在し,事例 2 では,同一の給食摂取にかかわらず,T 校舎 2 階と 3 階,特に 2 階に在室した児童に高率に胃腸炎発症者が集中していた。
結論 事例 1 と事例 2 は,独立した集団発生であり,いずれも発症者が校内の特定の区域に偏在していたことから,その区域のノロウイルスによる環境汚染が感染源として濃厚に疑われた。さらに,発症者の時間的空間的パターンから,事例 2 では,2 階と 3 階に複数の感染源の存在が示唆された。以上の結果から,ウイルスによる広範囲な環境汚染が生じるという認識が,感染制御の上で重要であると考えられた。

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