日本公衆衛生雑誌
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原著
地域在住高齢者の日中の眠気
岡村 毅井藤 佳恵金野 倫子稲垣 宏樹杉山 美香佐久間 尚子粟田 主一
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2012 年 59 巻 9 号 p. 675-683

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抄録

目的 日本語版エプワース眠気尺度を用いて地域在住高齢者の主観的な日中の眠気を測定し,性•年齢階級別の得点分布を記述した。また日中の過度の眠気(Excessive daytime sleepiness,以下 EDS)の出現頻度を調べ,関連要因を探索した。
方法 東京都 A 区在住の65歳以上の全高齢者のうち,4 月~9 月生まれで,施設入所中の者,要介護認定を受けている者を除く3,195人を対象とした。郵送法による自記式アンケート調査を実施し,日本語版エプワース眠気尺度ならびに社会人口統計学的要因と健康関連要因等を調査した。2,034人から有効票を回収し(回収率63.7%),日本語版エプワース眠気尺度に欠損値のない1,494人(男性652人,女性842人)を解析対象とした。解析対象者1,494人は対象者3,195人のうち46.8%であった。
結果 全体の日本語版エプワース眠気尺度の平均得点±標準偏差は5.0±3.8で,男性は5.6±4.1,女性は4.4±3.4で,男性で有意に大きい値を示した(P<0.01)。
  日本語版エプワース眠気尺度で11点以上と定義する EDS は全体で131人(8.8%),男性83人(12.7%),女性48人(5.70%)で男性に有意に高率であった(P<0.01)。関連要因の検討では「男性」,「仕事をしている」,「精神的健康度不良」,「活動能力低下あり」,「主観的記憶力低下あり」が EDS に有意に関連した。性で層化したところ,男性では「ソーシャルネットワークが小さい」,「主観的記憶力低下あり」が,女性では「肥満あり」,「活動能力低下あり」が有意な関連を示した。
結論 地域在住高齢者において,EDS の出現頻度は男性が女性よりも高く,関連要因には性差が認められた。この知見は臨床上は眠気を訴える患者の評価と治療に,保健上は事業の構想に有用である。

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© 2012 日本公衆衛生学会
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