日本公衆衛生雑誌
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研究ノート
保健師が事業化する際の困難およびその解決策と事業提供経験との関連 保健師勤務年数群別の比較
吉岡 京子村嶋 幸代
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2013 年 60 巻 1 号 p. 21-29

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抄録

目的 保健師は,多くの住民の問題を改善するために新規事業を開発しており,この方策は事業化と呼ばれている。本研究では,日本の保健師が事業化する際の困難とその解決策について解明し,事業が住民に提供された経験の有無との関連について勤務年数群別に明らかにする。
方法 2005年に合併しない1871市区町村から374市町村を無作為抽出し,協力の得られた305市町村に勤務する2,306人の保健師を対象に,無記名自記式質問紙調査を行った。調査項目は,保健師の属性,事業化経験の有無であり,事業化に至らなかった理由や,事業化する際の困難とその解決策について自由記述を求め,内容分析に基づき分類した。保健師の勤務年数によって,新任期,前期中堅期,後期中堅期,ベテラン期の 4 群に分けた。「事業化する際の困難」および「事業化する際の困難に対してとった解決策」について,保健師の勤務年数群別に彼らのとった行動の割合を,χ2 検定(Fisher の直接確率検定)を用いて比較した。
結果 全有効回答数1,270人の内訳は,新任期340人,前期中堅期347人,後期中堅期329人,ベテラン期254人であった。
  分析の結果,事業化する際の困難について,すべての勤務年数群で,「多忙」と回答した者は,提供群よりも非提供群の方が有意に多かった。事業化する際の困難に対してとった解決策について,すべての勤務年数群で,非提供群よりも提供群の方が有意に多く記述がみられたのは,「上司や同僚の保健師の仕事に対する理解を深めるための働きかけをする」,「事業化の必要性を根拠に基づき説明する」,「日頃から事業化を円滑に進めるための情報共有をする」,「事業化の必要性を示すための根拠を整理する」,「具体的な事業案を作成する」,「関係者の理解•協力を得て事業化への合意形成を図る」,「予算を捻出する」の 7 項目であった。
結論 保健師が困難を乗り越えて事業化するためには,上司や同僚に保健師の仕事を理解してもらい,根拠に基づき事業化の必要性を説明すること,および丁寧な合意形成と予算の捻出方法を検討することが,その一助になると考えられる。

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© 2013 日本公衆衛生学会
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