日本公衆衛生雑誌
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60 巻, 1 号
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原著
  • Emi (UETA) NODA, Taka MIFUNE, Takeo NAKAYAMA
    2013 年 60 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    Objectives To characterize information on diabetes prevention appearing in Japanese general health magazines and to examine the agreement of the content with that in clinical practice guidelines for the treatment of diabetes in Japan.
    Methods We used the Japanese magazines’ databases provided by the Media Research Center and selected magazines with large print runs published in 2006. Two medical professionals independently conducted content analysis based on items in the diabetes prevention guidelines. The number of pages for each item and agreement with the information in the guidelines were determined.
    Results We found 63 issues of magazines amounting to 8,982 pages; 484 pages included diabetes prevention related content. For 23 items included in the diabetes prevention guidelines, overall agreement of information printed in the magazines with that in the guidelines was 64.5% (471 out of 730). The number of times these items were referred to in the magazines varied widely, from 247 times for food items to 0 times for items on screening for pregnancy-induced diabetes, dyslipidemia, and hypertension. Among the 20 items that were referred to at least once, 18 items showed more than 90% agreement with the guidelines. However, there was poor agreement for information on vegetable oil (2/14, 14%) and for specific foods (5/247, 2%). For the fatty acids category, “fat” was not mentioned in the guidelines; however, the term frequently appeared in magazines. “Uncertainty” was never mentioned in magazines for specific food items.
    Conclusion The diabetes prevention related content in the health magazines differed from that defined in clinical practice guidelines. Most information in the magazines agreed with the guidelines, however some items were referred to inappropriately. To disseminate correct information to the public on diabetes prevention, health professionals and the media must collaborate.
公衆衛生活動報告
  • 村山 洋史, 上松 志乃, 鈴木 裕里子
    2013 年 60 巻 1 号 p. 10-20
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    目的 地域包括支援センター職員を対象にした地区診断についての研修プログラムの効果を検討する。
    方法 研修プログラムの一般目標は,「地区診断のプロセスを経験し,その手法を身に付ける」とし,行動目標は,「参加者が地区診断に必要なプロセスを説明できる」,「参加者が地区診断を業務内に組み入れるようになる」の 2 つとした。東京都杉並区の地域包括支援センター職員19人に対して全 6 回の研修を2011年 5 月~10月に実施した。研修は Community as Partner モデルを参考に構成し,参加者によるグループワークを中心に行った。研修評価には,出席率および毎回の研修内容の評価を含むプロセス評価,脱落率を含むアウトプット評価,研修前,研修直後および研修終了 4 か月後の質問紙調査による定量的アウトカム評価,研修直後の自由記載調査による定性的アウトカム評価の手法を用いた。定量的アウトカム評価では,2 つの行動目標に対応した項目(具体的にイメージできる,業務内での優先順位),および地区診断を業務内で実施することへの自己効力感についての項目を設定した。
    結果 各回の出席率は83%~100%であった。内容評価はいずれの回でも出席者のほぼ全員(90%半ば~100%)から肯定的な回答を得た。参加者19人中,途中で休職した 1 人を除く18人が全 6 回の研修を修了し(脱落率 5%),全回出席者が13人,1 回のみ欠席者が 5 人であった。定量的アウトカム評価の結果,「地域の特徴や課題の発見•明確化」,「地域の課題に対する事業計画•展開」の地区診断の 2 つのプロセスの両者について,参加者は研修前後で具体的にイメージできるようになり,その効果は研修終了 4 か月後も維持されていた。また,これらを実施することへの自己効力感は研修前後で変化はなかったが,研修終了 4 か月後には向上していた。さらに,業務内での優先順位では,地域の課題に対する事業計画•展開について,研修直後に比べて研修終了 4 か月後で高くなっていた。定性的アウトカム評価では,参加者が地区診断の手法や重要性を理解しただけでなく,現在の事業や計画の見直しのきっかけや,センター全体で地域について考え,共有する必要性の認識につながっていた。
    結論 より詳細な検討が必要ではあるものの,地区診断に着目した研修を地域包括支援センター職員に対して実施した場合,地区診断への理解や具体的イメージの構築,業務に組み入れることへの自信の向上をはじめとする参加者個人の認識や行動への効果に加え,地域包括支援センターの組織活動への効果も上げ得ることが示された。
研究ノート
  • 吉岡 京子, 村嶋 幸代
    2013 年 60 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    目的 保健師は,多くの住民の問題を改善するために新規事業を開発しており,この方策は事業化と呼ばれている。本研究では,日本の保健師が事業化する際の困難とその解決策について解明し,事業が住民に提供された経験の有無との関連について勤務年数群別に明らかにする。
    方法 2005年に合併しない1871市区町村から374市町村を無作為抽出し,協力の得られた305市町村に勤務する2,306人の保健師を対象に,無記名自記式質問紙調査を行った。調査項目は,保健師の属性,事業化経験の有無であり,事業化に至らなかった理由や,事業化する際の困難とその解決策について自由記述を求め,内容分析に基づき分類した。保健師の勤務年数によって,新任期,前期中堅期,後期中堅期,ベテラン期の 4 群に分けた。「事業化する際の困難」および「事業化する際の困難に対してとった解決策」について,保健師の勤務年数群別に彼らのとった行動の割合を,χ2 検定(Fisher の直接確率検定)を用いて比較した。
    結果 全有効回答数1,270人の内訳は,新任期340人,前期中堅期347人,後期中堅期329人,ベテラン期254人であった。
      分析の結果,事業化する際の困難について,すべての勤務年数群で,「多忙」と回答した者は,提供群よりも非提供群の方が有意に多かった。事業化する際の困難に対してとった解決策について,すべての勤務年数群で,非提供群よりも提供群の方が有意に多く記述がみられたのは,「上司や同僚の保健師の仕事に対する理解を深めるための働きかけをする」,「事業化の必要性を根拠に基づき説明する」,「日頃から事業化を円滑に進めるための情報共有をする」,「事業化の必要性を示すための根拠を整理する」,「具体的な事業案を作成する」,「関係者の理解•協力を得て事業化への合意形成を図る」,「予算を捻出する」の 7 項目であった。
    結論 保健師が困難を乗り越えて事業化するためには,上司や同僚に保健師の仕事を理解してもらい,根拠に基づき事業化の必要性を説明すること,および丁寧な合意形成と予算の捻出方法を検討することが,その一助になると考えられる。
  • 横川 吉晴, 征矢野 あや子, 甲斐 一郎
    2013 年 60 巻 1 号 p. 30-36
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    目的 日常生活で同時に二つの行為を行う場合,注意や判断能力の低下に伴い高齢者の転倒の危険は高まる。知的作業を用いる副課題と歩行運動からなる二重課題歩行テストは,心身機能の低下を推測する上で有用である。これまで本邦でテストの特性を検討した報告は少ない。本研究は自立した在宅高齢者を対象に二重課題歩行テストを行い,転倒要因との関連を明らかにすることを目的とした。
    方法 長野県松本市が実施した「出前ふれあい健康教室」に参加した中高齢の住民296人の測定を行い,このうち在宅自立高齢者127人を解析対象者とした。二重課題歩行テストは「二桁数字逆唱を副課題とした歩行」とし,通常の「自由歩行」を併せて測定した。歩幅,歩行速度,ケイデンス(単位時間内の歩数)を歩行能力の指標とした。他の測定項目は短縮版ストループテスト遂行時間,認知症スクリーニングテスト(RDST–J),片脚立位保持時間,老研式活動能力指標とした。性,年齢別に,副課題の有無による歩行能力の差を検討した。つぎに歩行能力を従属変数,副課題の有無と各心身機能高低 2 群(短縮版ストループテスト遂行時間,RDST–J,片脚立位保持時間)および転倒既往有無を独立変数とした二元配置分散分析を行った。
    結果 対象者の平均年齢は75.4±6.0歳,女性102人(75.2±6.1歳),男性25人(75.9±5.6歳)であった。自由条件と副課題下で,ともに歩幅とケイデンスの男女差を認めた。後期高齢女性のみ自由歩行と比べて二桁数字逆唱時の歩行速度は低下した。副課題の有無と心身機能高低の条件の組合せによって歩行能力の違いを示した。転倒既往の有無や副課題との組合せは歩行能力に関連しなかった。
    結論 活動能力を保持した高齢者でも,心身機能が低値の場合に二重課題歩行を行うと,歩幅,歩行速度,ケイデンスが低下する傾向にあった。機能低下傾向にある高齢者では副課題の処理のため歩行への注意配分が減り,同時に,歩行動作を維持するために緩慢な動作になると考えられた。今後の課題は,将来の転倒との関連や介入効果の指標の検証がある。
資料
  • 瀧本 秀美, 米澤 純子, 島田 真理恵, 加藤 則子, 横山 徹爾
    2013 年 60 巻 1 号 p. 37-46
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    目的 助産師は,妊婦への食生活支援の機会が最も多い保健医療専門職であるが,支援の実態に関する全国規模の調査はほとんどない。そこで妊婦に対する食生活支援の実態を明らかにするために,2006年に厚生労働省から発表された「妊産婦のための食生活指針」の活用状況に関する調査と,指針の活用に関連する状況について分析を行った。
    方法 日本助産師会会員から2,000人を無作為抽出し,郵送法で依頼状と調査票,ならびに返送用封筒を送付し,841人から回収を得た(回収率42.1%)うち,無職あるいは教育職のため有効回答が得られなかった44人と,白紙回答の 4 人,年齢階級または分娩取扱の有無について回答が未記入であった 8 人を解析から除外して,計785通を解析対象とした。
      調査票の内容は,年齢階級,経験年数,分娩取扱の有無,所属施設の年間分娩取扱数,妊婦の食生活支援として実施している業務と連携職種,「妊産婦のための食生活指針」の内容の認知とその活用状況である。指針の内容は「妊産婦のための食生活指針」の 6 項目(1. 妊産婦のための食事バランスガイド,2. 妊娠期の至適体重増加チャート,3. たばことお酒の害について,4. 妊産婦のための食育のすすめ,5. 葉酸サプリメントの情報提供,6. 貧血予防の食事指導)を取り上げた。
    結果 回答者は20~29歳が1.8%と少なかった。分娩取扱者は392人と約半数であった。「妊産婦のための食生活指針」の内容を認知していた者は519人(66.1%)であった。指針の内容を認知していた食生活支援実施者426人中,指針の内容の 6 項目いずれかの活用者割合は88.0%であった。6 項目のうち最も活用者割合が高かったのは「貧血予防の食事」で活用者割合は75.8%であり,最も低かったのは「妊産婦のための食育のすすめ」で活用者割合は58.5%であった。分娩取扱者における 6 項目いずれかの活用者割合は84.9%であり,非取扱者の92.6%と比べ有意差を認めた(P=0.02)。分娩取扱者では,すべての項目で「所属している施設または自身で作成した資料を利用している」ことが,活用していない理由として最も多かった。非取扱者では,上記理由が最も多かったのは「妊産婦のための食事バランスガイド」,「たばことお酒の害について」,「妊産婦のための食育のすすめ」の 3 項目であった。
    結論 回答者の助産師にとって,妊婦への食生活支援は分娩とならぶ重要な業務であることが明らかとなった。また,指針の内容を認知している食生活支援実施者では,約 9 割が指針の 6 項目いずれかを活用していた。指針の個別項目が一層活用されるためには,助産師が活用している独自資料の内容を把握するとともに,助産師が利用しやすい指針のマニュアル等の整備が必要であると考えられた。
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