日本公衆衛生雑誌
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原著
『介護予防チェックリスト』の虚弱指標としての妥当性の検証
新開 省二渡辺 直紀吉田 裕人藤原 佳典西 真理子深谷 太郎李 相侖金 美芝小川 貴志子村山 洋史谷口 優清水 由美子
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2013 年 60 巻 5 号 p. 262-274

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抄録

目的 わが国の高齢者に適用できる簡便な虚弱指標はいまだ提案されていない。本研究は,要介護リスクのスクリーニング尺度として著者らが開発した『介護予防チェックリスト』を虚弱指標として用いることの妥当性を検討した。
方法 群馬県草津町の65歳以上住民を対象に実施された高齢者健診(2007年 5 月)を受診した612人のうち,すべてのデータがそろった526人を解析対象とし,Fried らの虚弱を外的基準として介護予防チェックリスト(CL と略す)の併存的および構成概念妥当性を検討した。次に,同町の70歳以上全高齢者1,039人を対象に実施された訪問面接調査(2001年10–11月,初回調査)に応答した916人を 4 年 4 か月追跡し,追跡期間中の ADL 障害や介護保険サービス利用の有無および生死を調べ,初回調査における CL への回答状況とこれらアウトカムとの関連性について,性,年齢および comorbidity の有無を調整して分析し,CL の予測的妥当性を検討した。
結果 CL のカットオフ・ポイントを 3 点/4 点とした場合,Fried らの虚弱に対する感度,特異度は70.0%,89.3%であった。CL 得点が高くなるほど虚弱の該当率が上昇し,その傾向性は統計学的に有意であった(P<0.001)。また,多特性・多方法による分析では,CL の 3 つの構成概念(閉じこもり,転倒,低栄養)は,Friedらの虚弱の 5 つの構成概念のうち Shrinking, Exhaustion, Low activity, Slowness の 4 つとの間に,CL の 3 つの構成概念相互の相関性を上回る相関性を示したが,Weakness との相関性はそれを下回った。CL 得点が 4 点以上群の 3 点以下群に対する 2 年後,4 年後の ADL 障害の多変量調整オッズ比は,5.25(95%信頼区間:2.79–9.89),3.42 (1.79–6.54)であった。同様に,追跡期間中の介護保険サービス利用の開始または死亡の多変量調整ハザード比は,3.50(2.41–5.07)および2.43(1.70–3.47)であった。
結論 構成概念妥当性に課題を残すものの,『介護予防チェックリスト』を虚弱指標として用いることの併存的および予測的妥当性が示された。同チェックリストは15項目の質問から成る簡便な尺度であり,今後わが国の高齢者の虚弱に関する疫学研究や予防的介入での活用が期待される。

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© 2013 日本公衆衛生学会
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