日本公衆衛生雑誌
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公衆衛生活動報告
学校欠席者情報収集システムを活用した麻しんおよび風しん早期探知・早期対応
渡邉 美樹栗田 順子髙木 英永田 紀子長洲 奈月菅原 民枝大日 康史
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2016 年 63 巻 4 号 p. 209-214

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抄録

目的 茨城県では,感染症の流行状況の監視,早期探知・早期対応,大規模集団発生の予防を目的とし,日本学校保健会が運用している学校欠席者情報収集システム(保育園サーベイランス含む。)(以下「システム」という。)を全学校,全保育園(以下「学校等の施設」という。)で導入しており,本県の感染症担当者はこのシステムを感染症対策に役立てている。中でも,システムに麻しんあるいは風しんが登録された場合には,行政関係者にメールが自動的に送信され,対応を促す機能がある。
 本研究ではシステムを活用した県内における麻しんおよび風しん症例に対する行政対応を整理し,今後の課題を検討する。
方法 2013年 1 月 1 日~2014年12月31日までにシステムから探知した麻しんおよび風しんについて,施設の登録から探知,初動までの流れを整理し,探知された症例数および感染症法に基づく発生届数について比較した。
活動内容 システムに登録された麻しんあるいは風しん症例は,すべて登録のあった当日に保健所から医療機関または学校等の施設に内容の確認が行われた。2 年間にシステムから探知した症例数は,麻しんおよび風しんがそれぞれ2013年は 5 例,56例,2014年は 1 例,19例であり,全症例について保健所で確認や調査が行われた。システムで探知した症例の内,発生届が提出された症例数は,2013年が 0 例,7 例,2014年が 0 例,1 例であり,システム探知後に感染症発生動向調査事業に基づき発生届が提出された症例数は2013年が 0 例,4 例,2014年が 0 例,1 例であった。調査および検査結果は,保健所から学校等の施設に情報が還元され,届出基準に該当しない症例については,システム上で疑い症例へ変更または削除が行われた。
結論 システムを活用したことにより,麻しんおよび風しんの早期探知・早期対応ができたことは感染症対策上非常に有用であった。また,結果が速やかに還元されたことから,学校等の施設内での対策および医療機関から報告される麻しんおよび風しんの確定診断に役立った。
 システムの安定的な運用,そしてデータを有効活用するためには,学校等からの入力が重要であるため,研修会を毎年開催し,精度を維持していくことが重要である。今後も学校等の施設や医療機関,行政等の関係機関と連携をより深め,感染症対策に役立てていく必要があると考える。

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© 2016 日本公衆衛生学会
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