日本公衆衛生雑誌
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63 巻 , 4 号
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原著
  • 岩田 昇, 堀口 和子
    2016 年 63 巻 4 号 p. 179-189
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/14
    ジャーナル フリー
    目的 本研究は在宅介護に関わる認知的評価および対処方略・介護による生活影響が,要介護者の性別および主介護者の続柄(配偶者・息子・娘・嫁)によって異なるか否かを検討することを目的とした。
    方法 37都道府県内の比較的規模の大きい1,110訪問看護ステーションに調査協力を依頼し,83ステーションから協力同意を得た。各ステーションの管理者に高齢者介護を行っている同居家族を最大20まで選抜し,その家族に質問紙調査票を配布するよう依頼した。その結果選抜された1,278家族の主介護者に,介護に関する認知評価および対処方略・介護による生活への影響に関する自記式測定尺度を含む無記名の質問紙調査を行った。郵送法にて調査票を回収し,計1,020家族から回答を得た(回収率79.8%)。
    結果 要介護者の性別および主介護者の続柄の二元配置分散分析の結果,要介護者の要介護度,主介護者の認知的介護評価・対処方略・介護による生活への影響の約半数の尺度で有意な交互作用が認められた。要介護度は,娘が介護する場合,父親より母親の方が高かった。妻を介護する夫や義父を介護する嫁で,社会活動制限感が強く,介護のペース配分が悪く,介護による生活へのネガティブな影響をより強く感じていた。妻を介護する夫は,夫を介護する妻より自己成長感が低く,父親を介護する娘は受容感が低く,妻を介護する夫は家族等の支援が乏しかった。要介護者の性別による主効果は認められなかったが,主介護者続柄では,配偶者に介護されている要介護者は,子に介護されている要介護者より年齢が低く,認知症も少なかった。また,介護する夫の介護継続に関する不安は高いが,夫・妻とも介護の充足感や受容感は高かった。
    結論 在宅介護に関する認知的評価や対処方略および介護による生活への影響は要介護者の性別と介護者の続柄の組合せによって異なっていることが明らかになった。要介護者のケアだけでなく,家族介護者の心理的な負担感の軽減方略を視野に入れた介護保険サービスの必要性が示唆された。
  • 中堀 伸枝, 関根 道和, 山田 正明, 立瀬 剛志
    2016 年 63 巻 4 号 p. 190-201
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/14
    ジャーナル フリー
    目的 近年,核家族化や女性の労働参加率の増加など,子どもの家庭環境をめぐる変化は著しく,子どもの食行動や生活習慣,健康に影響を与えていると考えられる。本研究では,家庭環境が子どもの食行動や生活習慣,健康に与える影響について明らかにすることを目的とした。
    方法 対象者は,文部科学省スーパー食育スクール事業の協力校である富山県高岡市内の 5 小学校の全児童2,057人とその保護者を対象とした。2014年 7 月に自記式質問紙調査を実施した。総対象者中,1,936人(94.1%)から回答が得られ,そのうち今回の研究に関連した項目に記載もれのない1,719人を分析対象とした。家庭環境を,「母の就業」,「家族構成」,「暮らしのゆとり」,「朝・夕食の共食」,「親子の会話」,「子の家事手伝い」,「保護者の食育への関心」,「栄養バランスの考慮」,「食事マナーの教育」とした。家庭環境項目を独立変数,子どもの食行動,生活習慣,健康を従属変数とし,ロジスティック回帰分析を行った。
    結果 母が有職であり,共食しておらず,子が家事手伝いをせず,保護者の食意識が低い家庭では,子どもが野菜を食べる心がけがなく,好き嫌いがあり,朝食を欠食し,間食が多いなど子どもの食行動が不良であった。親子の会話が少なく,子が家事手伝いをせず,保護者の食意識が低い家庭では,子どもが運動・睡眠不足があり,長時間テレビ視聴やゲーム利用をしているなど,子どもの生活習慣が不良であった。暮らしにゆとりがなく,親子の会話が少なく,子が家事手伝いをせず,保護者の食意識が低い家庭では,子どもの健康満足度が低く,朝の目覚めの気分が悪く,よくいらいらし,自己肯定感が低いなど,子どもの健康が不良であった。
    結論 子どもの食行動の良さ,生活習慣の良さおよび健康には,良い家庭環境が関連していた。子どもの食行動や生活習慣,健康を良くするためには,保護者の食意識を高め,親子の会話を増やし,子に家事手伝いをさせるなどの家庭環境を整えていくことが重要である。
  • 宮村 季浩
    2016 年 63 巻 4 号 p. 202-208
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/14
    ジャーナル フリー
    目的 認知症によって,認知症の人は新たな生活上の困難さをかかえることになると予想され,周囲の人,とくに介護者がその生活上の困難さを正しく認識することは,認知症の人が豊かな生活を送るために重要である。そこで本研究は,認知症の人と同居の家族介護者および認知症の人と接する看護職からの情報を基に,認知症の人が認識している生活上の困難さと,家族介護者が認識している認知症の人の生活上の困難さがどの程度一致しているのか明らかにする目的で実施した。
    方法 東京都内で在宅介護を受けている65歳以上の認知症の人106人(男性23人,女性83人)に生活上の困難さについて聞き取り調査を行い,さらに同居の家族介護者に対して認知症の人の生活上の困難さについての聞き取り調査と基本情報についての質問紙調査を行った。また,認知症の人と接する看護職に対して医療・介護に関する情報についての質問紙調査を行った。本研究における認知症の人の生活上の困難さとは,認知症によって生じた認知症の人の生活に支障をもたらす問題を示すこととしている。生活上の困難さは,聞き取り調査の回答を基に出現頻度の高かった,疼痛,幻覚・妄想,攻撃的言動,記憶,見当識,意思疎通,不安・混乱,排泄,歩行,食事,睡眠障害,引きこもりの12項目に分類した。さらに家族介護者と認知症の人と接する看護職に対する質問紙調査の回答から,認知症の人の基本情報,認知症の診断名と重症度,介護度,中核症状,BPSD やせん妄についての情報を得て解析を行った。
    結果 調査の結果,認知症の人の生活上の困難さについて,認知症の人と家族介護者の認識が一致しない状況が多くみられた。とくに疼痛については,認知症の人の生活上の困難さであると認識している家族介護者はおらず,そのため積極的に疼痛の治療を行っている事例も少なかった。一方で,幻覚・妄想や攻撃的言動は出現するほとんどの事例で家族介護者が認知症の人にとっての生活上の困難さであると認識していた。また,疼痛を生活上の困難さと認識することと睡眠障害の出現との間に有意な関係がみられた。
    結論 家族介護者と認知症の人では生活上の困難さの認識には大きなずれがあり,家族介護者の視点で行われる対応だけでは認知症の人の生活上の困難さが見落とされる可能性が示唆された。
公衆衛生活動報告
  • 渡邉 美樹, 栗田 順子, 髙木 英, 永田 紀子, 長洲 奈月, 菅原 民枝, 大日 康史
    2016 年 63 巻 4 号 p. 209-214
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/14
    ジャーナル フリー
    目的 茨城県では,感染症の流行状況の監視,早期探知・早期対応,大規模集団発生の予防を目的とし,日本学校保健会が運用している学校欠席者情報収集システム(保育園サーベイランス含む。)(以下「システム」という。)を全学校,全保育園(以下「学校等の施設」という。)で導入しており,本県の感染症担当者はこのシステムを感染症対策に役立てている。中でも,システムに麻しんあるいは風しんが登録された場合には,行政関係者にメールが自動的に送信され,対応を促す機能がある。
     本研究ではシステムを活用した県内における麻しんおよび風しん症例に対する行政対応を整理し,今後の課題を検討する。
    方法 2013年 1 月 1 日~2014年12月31日までにシステムから探知した麻しんおよび風しんについて,施設の登録から探知,初動までの流れを整理し,探知された症例数および感染症法に基づく発生届数について比較した。
    活動内容 システムに登録された麻しんあるいは風しん症例は,すべて登録のあった当日に保健所から医療機関または学校等の施設に内容の確認が行われた。2 年間にシステムから探知した症例数は,麻しんおよび風しんがそれぞれ2013年は 5 例,56例,2014年は 1 例,19例であり,全症例について保健所で確認や調査が行われた。システムで探知した症例の内,発生届が提出された症例数は,2013年が 0 例,7 例,2014年が 0 例,1 例であり,システム探知後に感染症発生動向調査事業に基づき発生届が提出された症例数は2013年が 0 例,4 例,2014年が 0 例,1 例であった。調査および検査結果は,保健所から学校等の施設に情報が還元され,届出基準に該当しない症例については,システム上で疑い症例へ変更または削除が行われた。
    結論 システムを活用したことにより,麻しんおよび風しんの早期探知・早期対応ができたことは感染症対策上非常に有用であった。また,結果が速やかに還元されたことから,学校等の施設内での対策および医療機関から報告される麻しんおよび風しんの確定診断に役立った。
     システムの安定的な運用,そしてデータを有効活用するためには,学校等からの入力が重要であるため,研修会を毎年開催し,精度を維持していくことが重要である。今後も学校等の施設や医療機関,行政等の関係機関と連携をより深め,感染症対策に役立てていく必要があると考える。
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