日本公衆衛生雑誌
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原著
認知症の人の生活上の困難さについての認知症の人と家族介護者の認識の違い
宮村 季浩
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2016 年 63 巻 4 号 p. 202-208

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抄録
目的 認知症によって,認知症の人は新たな生活上の困難さをかかえることになると予想され,周囲の人,とくに介護者がその生活上の困難さを正しく認識することは,認知症の人が豊かな生活を送るために重要である。そこで本研究は,認知症の人と同居の家族介護者および認知症の人と接する看護職からの情報を基に,認知症の人が認識している生活上の困難さと,家族介護者が認識している認知症の人の生活上の困難さがどの程度一致しているのか明らかにする目的で実施した。
方法 東京都内で在宅介護を受けている65歳以上の認知症の人106人(男性23人,女性83人)に生活上の困難さについて聞き取り調査を行い,さらに同居の家族介護者に対して認知症の人の生活上の困難さについての聞き取り調査と基本情報についての質問紙調査を行った。また,認知症の人と接する看護職に対して医療・介護に関する情報についての質問紙調査を行った。本研究における認知症の人の生活上の困難さとは,認知症によって生じた認知症の人の生活に支障をもたらす問題を示すこととしている。生活上の困難さは,聞き取り調査の回答を基に出現頻度の高かった,疼痛,幻覚・妄想,攻撃的言動,記憶,見当識,意思疎通,不安・混乱,排泄,歩行,食事,睡眠障害,引きこもりの12項目に分類した。さらに家族介護者と認知症の人と接する看護職に対する質問紙調査の回答から,認知症の人の基本情報,認知症の診断名と重症度,介護度,中核症状,BPSD やせん妄についての情報を得て解析を行った。
結果 調査の結果,認知症の人の生活上の困難さについて,認知症の人と家族介護者の認識が一致しない状況が多くみられた。とくに疼痛については,認知症の人の生活上の困難さであると認識している家族介護者はおらず,そのため積極的に疼痛の治療を行っている事例も少なかった。一方で,幻覚・妄想や攻撃的言動は出現するほとんどの事例で家族介護者が認知症の人にとっての生活上の困難さであると認識していた。また,疼痛を生活上の困難さと認識することと睡眠障害の出現との間に有意な関係がみられた。
結論 家族介護者と認知症の人では生活上の困難さの認識には大きなずれがあり,家族介護者の視点で行われる対応だけでは認知症の人の生活上の困難さが見落とされる可能性が示唆された。
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© 2016 日本公衆衛生学会
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