2017 年 64 巻 12 号 p. 727-733
目的 ひきこもり支援の裾野を広げるためにはひきこもりサポーター養成派遣事業を活用することが重要である。そこで堺市におけるひきこもりサポーター養成派遣事業の取り組みを報告し,3年間の活動報告から効果的な事業のあり方について検討した。
方法 堺市ではひきこもりサポーター養成派遣事業として,ひきこもりの集団支援段階に当事者のピアサポーターを活用することを目的とした「堺市ユース・ピアサポーター養成派遣事業」を実施した。2013年度から2015年度までの3年間に実施された養成講座とピアサポーターによる活動状況を分析した。
活動内容 ひきこもり相談の利用を経て社会参加活動を開始している者を対象に,グループワークの企画方法に関する講座など全4回の養成講座を3年間で3クール実施したところ,15人(男性11人,女性4人,平均年齢31.9歳,ひきこもり期間の平均76.5か月)が受講してピアサポーターとして登録した。その全員がピアサポーター活動を開始し,延べ453回の活動をした。ピアサポーターにより延べ30回のグループワークが企画され,延べ372人の利用者が得られ,ひきこもりの集団支援を充実させることができた。
結論 本報告の養成講座およびグループワークの企画というピアサポーター活動は,ピアサポーター自身の経験を活かせる,ひきこもり事例に対する間接的な支援であるなどの点から,ひきこもりのピアサポーターが取り組みやすいものであったと思われた。ピアサポーターによる支援によって集団支援が充実したと同時に,ピアサポートによる影響が生じ,ピアサポーター自身の主体性の回復にも繋がる取り組みであった。