日本公衆衛生雑誌
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原著
離島における青壮年期女性の生活習慣病のリスクを高める飲酒に関連する要因
櫻井 純子井上 まり子
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2018 年 65 巻 9 号 p. 525-533

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抄録

目的 飲酒に比較的寛容な離島で生活習慣病のリスクを高める量の飲酒(女性では1日平均エタノール摂取量が20 g以上,以下飲み過ぎとする)をする女性の社会的要因を把握することを目的とする。

方法 調査対象は鹿児島県の離島である与論町在住の20-64歳の住民で,年齢階級と地区で層別化して無作為に抽出された812人に2016年7月に実施した。生活習慣全般に関するアンケートに回答した女性393人,男性419人を対象とした。分析は,目的変数を飲み過ぎの有無,説明変数を社会的要因,生活習慣,心身の健康状態とした多重ロジスティック回帰分析を行い,関連を検討した。最終的に年齢,子どもの有無,在住期間を調整して分析した。

結果 分析対象となった309人の女性のうち,飲み過ぎの女性は46人(14.8%)であり,男性では86人(30.7%)であった。飲み過ぎに関連する要因として「飲食・観光」の従事者(オッズ比(OR)6.73, 95%信頼区間(95%CI)1.13-39.98),「喫煙」する者(OR 4.47, 95%CI 1.36-14.63),1か月以内に「レクリエーション活動」の参加がある者(OR 4.47, 95%CI 1.93-10.39),過去2週間以内に「気分の落ち込み」があった者(OR 2.47, 95%CI 1.08-5.68),1番多い飲酒場所が「自宅」(OR 16.52, 95%CI 6.77-40.29)の者が関連していた。

結論 本研究では対象となる島が1つであり,解析率の制限という限界はあるものの,飲み過ぎの者の社会的要因としてレクリエーション活動に参加する者と関連があったことから,人のつながりがある者での飲酒行動を注視する必要がある。また,飲み過ぎと抑うつの関連の強さが女性のみに示唆された。健康に与える影響に鑑みれば飲酒文化に配慮しつつ,過度の飲酒は是正されるべきである。結果は健康増進計画(第二次)策定や地域連携に生かし,地域ぐるみの節酒支援を進めていく。

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