日本公衆衛生雑誌
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原著
産後再喫煙の現状とその要因に関する住民ベースの縦断研究
滝 仁志平光 良充原田 裕子勝田 信行松原 史朗氏平 高敏
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2018 年 65 巻 9 号 p. 534-541

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抄録

目的 妊娠を契機に禁煙しても,産後に再喫煙する母親は多い。我々は母親の産後再喫煙の現状とその危険因子を明らかにすることを目的として,住民に対する縦断研究を行った。

方法 2014年4月から2015年3月までの期間に名古屋市に妊娠を届出た妊婦にアンケート調査を実施した。調査項目は,妊娠届出時の喫煙行動,年齢,婚姻状況,出産経験,妊婦およびその夫(パートナー)の就業状態,不妊治療の有無,妊娠判明時の気持ち,里帰りの予定,困った時の援助者,夫(パートナー)や同居家族の同室喫煙,飲酒,2週間以上続く抑うつ症状である。また,児の3か月児健康診査および1歳6か月児健康診査受診時に喫煙行動を問診票より把握した。

 分析は全妊婦に加え,出産経験別にも行った。3か月時と1歳6か月時において,妊娠届の各項目と産後再喫煙についてカイ二乗検定もしくはFisherの正確確率検定を行い,全妊婦においてP<0.2であった項目を説明変数として強制投入しロジスティック回帰分析を行った。

結果 24,413人が妊娠を届出ており,このうち3か月時,1歳6か月時の喫煙行動を把握できた者はそれぞれ18,041人,14,163人であった。

 3か月時まで追跡できた18,041人のうち妊娠を契機に禁煙した者は初産婦1,031人,経産婦695人であり,3か月時の再喫煙者は初産婦89人(8.6%),経産婦107人(15.4%)であった。1歳6か月時まで追跡できた14,163人のうち妊娠を契機に禁煙した者は初産婦789人,経産婦568人であり,1歳6か月時の再喫煙者は初産婦155人(19.6%),経産婦174人(30.6%)であった。

 ロジスティック回帰分析の結果,3か月時には「経産婦」,「24歳以下」,「未婚・離婚・死別(経産婦のみ)」,「里帰りの予定なし」,「家族の同室喫煙(初産婦のみ)」,「2週間以上続く抑うつ症状(全体,初産婦のみ)」が,1歳6か月時には「経産婦」,「未婚・離婚・死別(全体のみ)」,「援助者がいない(全体のみ)」,「家族の同室喫煙」が産後再喫煙のリスクであった。

結論 3か月時以前よりも3か月時以降に再喫煙する者が多かった。3か月時と1歳6か月時で産後再喫煙の危険因子が異なっており,個々の母親に対し妊娠期から子育て期にかけて適切な時期に禁煙継続支援を行うことが必要である。

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© 2018 日本公衆衛生学会
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