日本公衆衛生雑誌
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原著
レセプト情報・特定健診等情報データベースを活用した都道府県の平均寿命に関連する要因の解析:地域相関研究
井上 英耶鈴木 智之小嶋 美穂子井下 英二李 鍾賛田中 佐智子藤吉 朗早川 岳人三浦 克之
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2019 年 66 巻 7 号 p. 370-377

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抄録

目的 都道府県間には平均寿命の格差が存在し,その要因の分析が必要である。そこで,全国約2,000万人分の特定健康診査データが掲載されているレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)のオープンデータを活用して平均寿命に関連する要因を検討し,今後の健康づくり施策のための基礎資料とすることを目的とした。

方法 2014年度都道府県別の特定健康診査項目および2015年都道府県別生命表に記載のある平均寿命を使用した。特定健康診査項目については第2回NDBオープンデータを利用し,2015年の国勢調査人口に基づく人口構成基準とし直接法により年齢標準化有所見割合等を算出した。平均寿命と相関の強い要因を抽出して説明変数とし,平均寿命を目的変数として重回帰分析をおこなった。その後,ステップワイズ変数増減法により変数選択を実施した。

結果 男性の平均寿命と有意な負の単相関があった項目は,飲酒日の2合以上の飲酒,お酒を飲む頻度が毎日,喫煙あり,BMI 25 kg/m2以上,空腹時血糖値126 mg/dL以上,収縮期血圧140 mmHg以上,拡張期血圧90 mmHg以上,中性脂肪150 mg/dL以上,血糖降下薬服用,血圧降下薬服用の10項目,正の単相関があったのはコレステロール降下薬服用であった。また,女性では,喫煙あり,BMI 25 kg/m2以上,拡張期血圧90 mmHg以上,血圧降下薬服用の4項目が負の単相関を示した。重回帰分析において,男性では飲酒日の2合以上の飲酒者,喫煙あり,血圧降下薬服用,血圧140 mmHg以上,空腹時血糖126 mg/dL以上が平均寿命と独立して負の関連がある項目として選択された。また,女性では,喫煙ありと血圧降下薬服用が平均寿命と独立して負の関連がある項目として選択された。

結論 NDBオープンデータを用いた分析において,都道府県間の平均寿命の格差には,喫煙,飲酒などの生活習慣と高血圧,高血糖などの循環器危険因子が関連する要因であることが推察された。都道府県が健康づくりに関する施策を進める際には,これらの要因に着目して施策をたてることが重要であることが示唆された。

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© 2019 日本公衆衛生学会
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