日本公衆衛生雑誌
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地方都市在住の高齢者における社会活動への不参加に関連する要因:富山県認知症高齢者実態調査の結果から
新鞍 真理子関根 道和山田 正明立瀬 剛志木戸 日出喜鈴木 道雄
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2022 年 69 巻 6 号 p. 435-446

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抄録

目的 社会活動は,高齢者の健康維持やQOLの向上に重要な役割がある。本研究は,地方都市在住の高齢者における社会活動への不参加に関連する要因について,社会活動の種類別(仕事,町内会活動,趣味の会,老人クラブ)に検討することを目的とした。

方法 2014年に富山県に居住する65歳以上の高齢者の中から0.5%で無作為抽出された1,537人のうち947人を分析対象とした。男女別に各社会活動への参加の有無を従属変数,その他の項目を独立変数として,ポアソン回帰分析を用いて有病割合比(Prevalence Ratio,以下PR)を算出した。有意水準は両側検定において5%とした。

結果 男性426人(平均年齢73.9±6.5歳),女性521人(平均年齢74.8±7.0歳)であった。

 仕事は,男女ともに高年齢(男性75歳以上PR1.15,女性70歳以上PR1.11)で無就業が多く,男性では通院治療中(PR1.09)と改訂長谷川式簡易知能評価スケール(以下,HDS-R)21~25点(PR1.09)と20点以下(PR1.12)の無就業が多く,女性では飲酒者(PR0.93)の無就業が少なかった。

 町内会活動は,男女ともに高年齢(男性70歳以上PR1.12,女性80歳以上PR1.11)で不参加が多く,男性では肉体労働のみの職歴(PR1.12)とHDS-R20点以下(PR1.16)の不参加が多く,女性では独居(PR0.92)の不参加が少なかった。

 趣味の会は,男女ともに肉体労働のみの職歴(男性PR1.05,女性PR1.08)の不参加が多く,男性では9年以下の教育歴(PR1.05),女性では独居(PR1.07)の不参加が多かった。年齢および認知機能の低下との関連はみられなかった。

 老人クラブは,男女ともに高年齢(男性75歳以上PR0.89,女性70歳以上PR0.93)と飲酒者(男性PR0.91,女性PR0.89)の不参加が少なく,男性では喫煙者(PR1.06)と精神的自覚症状あり(PR1.09),女性ではHDS-R20点以下(PR1.13)の不参加が多かった。

結論 地方都市在住の高齢者における社会活動は,社会活動の種類により不参加の関連要因が異なっていた。これらの地方都市在住の高齢者の特徴を踏まえた対策を検討することの重要性が示唆された。

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