日本公衆衛生雑誌
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保育所等における栄養士・管理栄養士の雇用の有無別による栄養管理の状況
野末 みほ石田 裕美由田 克士原 光彦阿部 彩緒方 裕光岡部 哲子吉岡 有紀子高橋 孝子坂本 達昭佐々木 ルリ子伊藤 早苗村山 伸子
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2023 年 70 巻 4 号 p. 261-274

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抄録

目的 本研究は保育所等を対象に,栄養士・管理栄養士の雇用の有無別による栄養管理の実態を把握することを目的とした。

方法 2019年に国内8市の1,538の保育所等を対象に質問紙を郵送し,回答が得られた979施設のうち950施設を解析対象とした。栄養管理については食事提供のPDCAサイクル12項目,保護者への栄養・食生活に関する情報提供8項目を尋ねた。栄養士・管理栄養士の雇用の有無別とPDCAサイクルおよび情報提供との関連をカイ二乗検定で検討した。次に,栄養士・管理栄養士の雇用の有無を独立変数とし,PDCAサイクルと情報提供の各項目を従属変数としてロジスティック回帰分析を行った。

結果 PDCAサイクルの実施状況について公立と私立ともに栄養士・管理栄養士の雇用あり群となし群の間に有意差が認められた項目は,身体活動レベルの把握,生活習慣の把握,成長曲線の作成であった。私立における管理栄養士の雇用あり群は,対象市と施設分類を調整後,肥満ややせの判定のオッズ比は3.07(95%CI: 1.72-5.46),給与栄養目標量の設定のオッズ比は4.10(95%CI: 1.48-11.38),給与栄養量の計算のオッズ比は3.51(95%CI: 2.03-6.08),成長曲線の作成のオッズ比は2.73(95%CI: 1.60-4.64),給与栄養目標量の設定の見直しのオッズ比は2.45(95%CI: 1.21-4.95)と栄養士・管理栄養士の雇用なし群に比べてオッズ比は有意に高くなるという関連が示された。情報提供について公立と私立ともに栄養士・管理栄養士の雇用あり群となし群の間に有意差が認められた項目は献立の栄養量の情報提供と給食の試食会の実施であった。私立における管理栄養士の雇用あり群は,対象市と施設分類を調整後,献立の栄養量の情報提供ありのオッズ比は2.09(95%CI: 1.30-3.35),栄養・食生活に関する情報提供ありのオッズ比は1.89(95%CI: 1.07-3.34),給食の試食会の実施ありのオッズ比は2.90(95%CI: 1.81-4.67)と栄養士・管理栄養士の雇用なし群に比べてオッズ比が有意に高かった。

結論 栄養士または管理栄養士の雇用あり群は栄養士・管理栄養士の雇用なし群に比べて栄養管理が良好であり,このことは公立よりも私立において明らかであった。

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