2023 年 70 巻 5 号 p. 321-331
目的 2016年に発生した障害者支援施設の事件をきっかけに精神科措置入院制度のあり方について検討がなされることになった。本研究では保健所職員による措置入院者への退院後支援の実態を明らかにすることを目的とした。
方法 精神保健福祉業務担当の保健所職員を対象とし,全国472保健所に対し郵送による自記式無記名質問紙調査を行った。調査内容は基本属性と文献を基に作成した措置入院者への退院後支援の実施程度3分類(本人支援,家族機能維持,関係者調整)41項目とした。実施程度の回答は「全くできてない」(1点)~「とてもできている」(4点)の4段階とし,得点が高いほど退院後の支援が実施できていることを意味した。基本統計量を算出後,措置入院者への退院後支援実施程度の3分類ごとに,基本属性による比較をMann-Whitney U検定,Kruskal-Wallis検定を用いて行い,有意水準は5%とした。
結果 回収数は609(回収率25.8%)で,そのうち関わったケース数を0と回答した対象者を解析対象から除外し,実施程度41項目を50%以上回答している582票を分析対象とした。対象の平均年齢は40.5±11.3歳,性別は男性18.2%,女性81.4%であった。本人支援に関して,精神保健福祉業務経験年数,精神保健福祉業務へのやりがい,学会,研修会の参加の有無に関して有意差が認められた。家族機能維持に関して,職位,資格の有無,所属保健所の設置主体,精神保健福祉業務へのやりがい,学会,研修会参加の有無に関して有意差が認められた。そして,関係者調整に関して,職位,資格の有無,所属保健所の設置主体,精神保健福祉業務担当職員数に関して有意差が認められた。
結論 退院後支援実施程度3分類と各属性の関連については,支援の経験,やりがい,自己学習への意欲,支援体制が影響していると考えられた。保健所職員が措置入院者への退院後支援を行いやすくするためには,学会・研究会参加の時間を確保すること,関わり続けることへの意義を感じられるようにすること,支援の効果をフィードバックしてもらうこと,そして関係者会議で情報共有する必要性が示唆された。