2025 年 72 巻 12 号 p. 961-967
2024年4月から始まった「21世紀における国民健康づくり運動:健康日本21」(第三次)は,健康寿命の延伸をめざすと同時に,社会環境の質の向上等を通じて生活習慣や環境等による格差を縮小することで,健康格差(地域や所得等の社会経済状況による格差)の縮小を目指している。本稿は,ヘルスプロモーション政策における健康格差対策として求められる視点に言及する。併せて,今後の日本の健康格差対策のアクションプランの重要な要素の健康格差のモニタリングの現状と課題を論じる。
健康日本21(第三次)の目標設定では,健康日本21(第二次)に目標として掲げられた健康寿命の格差の縮小に加え,生活習慣や環境による格差の縮小が取り上げられた。都道府県の役割として,区域内の市区町村ごとの健康状態や生活習慣,社会環境の差の把握を行い,地域間の健康格差(地域格差)の是正に向けた取組にも触れられた。
これまで日本の公的統計を使用した研究から,栄養摂取状況や肥満率,喫煙率,循環器疾患の危険因子の保有状況,歯科保健領域等の多面的な分野について,社会経済状況の違いによる健康格差の実態把握が進んできているが十分とは言えない。また,健康格差を縮小させるための実践的かつ公的な取り組みは乏しい。日本における健康格差対策の現状は,実態把握,計画,実施,改善というマネジメントの段階のうち,実態把握をより発展させると同時に,効果的なアクションの提示や実行といった計画,実施を進め,それらを各地域でシステム化することが求められるフェーズにある。
海外の健康格差のモニタリングの取り組みと対策の実例を参考として取り上げるとともに,日本で実施可能な,公的統計を活用した,がん,喫煙,歯・口腔の健康に関する健康格差モニタリングを検討する。また,国内自治体の取り組みとして,静岡県での取り組みを取り上げる。
健康日本21のアクションプランとして,まず公開されている公的統計を用いて健康格差を多面的な視点から「見える化」する仕組みを作り上げる。また,地域での具体的な取り組みを考えるために,従来からの都道府県間の格差ではなく市区町村のような小地域間での格差をモニタリングする仕組みづくりに移行する必要がある。政府や地方自治体,研究者が一丸となってモニタリングやアクションの計画・実行に取り組むことで,実態に即した健康格差対策の議論に結びつくことが期待される。