日本公衆衛生雑誌
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原著
在宅高齢者の転倒・転落に関連した器物・設備およびその使用方法別受傷率:救急活動記録を用いた算出
清水 鉄也 阪東 美智子麻生 保子横山 徹爾
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2025 年 72 巻 2 号 p. 115-125

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抄録

目的 転倒・転落の外的因子への介入は転倒・転落を減少させることが明らかになっている。一方で,介入の対象となる器物・設備およびその使用方法(以下器物等)と受傷率を網羅的に示した研究はわずかである。本研究では在宅高齢者の転倒・転落に関連した外的因子のうち,住宅内の詳細な器物等を示すこと,器物等の受傷率を受傷者の属性別に示すこと,および受傷程度が重くなる器物等を明らかにすることを目的とした。

方法 2019年中に自宅での転倒・転落により救急搬送された65歳以上の者を対象とした。埼玉県内の消防本部に救急活動記録の提供を依頼し,器物等毎の年齢層(65–74歳,75–84歳,85歳以上に区分)・性別の10万人年あたり受傷率と95%信頼区間,中等症以上の傷者数とその割合を示した。器物等はICD-10を用いて分類した後,使用方法別の細分類を行った。さらに,床を参照とし性,年齢層で調整したロジスティック回帰分析により,中等症以上となるオッズ比が有意に高い器物等を示した。

結果 3つの消防本部から計5,060例のデータ提供を受け,うち4,421例を分析対象とした。器物等はICD-10の20分類からさらに44に細分類できた。中等症以上は2,154例(48.7%)であった。65歳以上の受傷率は床(受傷率450.9,95%CI:434.5–467.9),階段(76.6, 69.9–83.8),ベッド(ベッド上から)(25.5, 21.7–29.8),段差(21.2, 17.7–25.1),トイレ(14.5, 11.6–17.8)の順で高かった。受傷率は器物等の間で異なることがあり,また同じ器物等であっても受傷者の年齢層や性別により異なることがあった。中等症以上となるオッズ比は屋根で高く(オッズ比8.95, 95%CI:1.52–169.40),他に有意差のある器物等はなかった。

結論 在宅高齢者の転倒・転落の受傷率や,受傷率の高い受傷者の属性,中等症以上となるオッズ比は転倒・転落に関連する器物等により異なっており,外的因子の低減策を検討する際にはこれらの特性を考慮する必要がある。

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