2025 年 72 巻 2 号 p. 126-134
目的 大阪市では2018年度と2019年度,病院への実地立入検査を実施したが,2021年度はCOVID-19の影響で書類審査を行った。
今回,実地立入検査結果と書類審査結果を活動報告した。本報告の目的は①2方法の結果を比較し,書類審査は実地立入検査と同様に病院を指導することが可能であるか,②今後仮に感染症がパンデミックとなった場合,どの方法が選択されるべきか,検討することである。
方法 2018年度,2019年度実地立入検査では,①計351病院へ書類・点検表送付➡②病院から書類回答➡③実地立入検査➡④郵送にて文書指摘・指導であった。
2021年度書類審査では,①市内176病院に書類・点検表送付➡②病院から書類回答➡③医療安全管理体制,院内感染対策に関して病院ができていないと回答した事項等について保健所行政医師3人が分担して,病院に電話し確認と指導➡④郵送にて文書指摘・指導であった。
そして,実地立入検査結果と書類審査結果を比較,検討した。
活動内容 実地立入検査年度に医療従事者不足での不適事項は,351病院中12病院(3.4%)で認めた。書類審査年度では176病院中8病院(4.5%)で,実地検査年度と書類審査年度で有意差を認めなかった。
医療安全管理体制に関し,実地立入検査年度に保健所が文書指導を行ったのは,351病院中95病院(27.1%)で,書類審査年度は176病院中21病院(11.9%)であった。実地立入検査では書類審査よりも,有意に指導を受けた病院の割合が高かった(P<0.001)。書類審査年度は,研修,医療事故発生時の体制整備の2項目において,文書指導が無かった。
院内感染対策で実地立入検査年度に文書指導となったのは,351病院中65病院(18.6%)で,書類審査年度は176病院中17病院(9.7%)であった。実地立入検査では書類審査よりも,有意に指導を受けた病院の割合が高かった(P=0.007)。書類審査年度は,指針,委員会,研修に関して,文書指導が無かった。
結論 書類審査では,関わる行政医師数が少なくて済み,指導基準を統一しやすいが,病院保管書類等を現地で確認出来ず指導すべき事項を覚知できない可能性があり,実地立入検査が望ましい。しかしパンデミック時にすべての医療機関が同様に実地立入検査を実施するのは困難と考えられ,オンライン併用医療監視について検討する必要がある。