2025 年 72 巻 2 号 p. 143-151
目的 本研究では,理学療法士における,避難行動要支援者の個別避難計画(以下,「個別避難計画」),「避難行動要支援者」,「福祉避難所」の各用語を知っている者の割合ならびに現場における活用状況を調査した。さらに,用語に関する知識があることとの関連要因を検討し,より多くの理学療法士が用語を知り,ひいては災害対応に積極的に参画できるようになるための方策検討に向けた資料を得ることを目的とした。
方法 一般社団法人福島県理学療法士会会員を対象に2023年3月8–31日にWeb調査を行った。調査項目は基本属性(年齢,性別,理学療法士経験年数など),「個別避難計画」,「避難行動要支援者」,「福祉避難所」を知っているか,知識習得の機会の有無,自身の被災・避難経験の有無,被災者支援経験の有無とした。知識の有無と,理学療法士経験年数,知識習得の機会の有無,自身の被災・避難経験の有無,被災者支援経験の有無の関連をχ2検定と残差分析で検討した。さらに,対象者の「個別避難計画」の把握状況および対象者の「個別避難計画」策定への参画の状況を尋ね,把握および参画している者には通常業務における「個別避難計画」の活用状況ならびに具体的な「個別避難計画」作成への参画状況を自由記載により尋ねた。
結果 1,645人の10.4%にあたる171人(年齢平均±標準偏差:38.4±8.5歳)から回答を得た。「個別避難計画」,「避難行動要支援者」,「福祉避難所」を説明できる程度に知っていると回答した者はそれぞれ7人(4.1%),21人(12.3%),17人(9.9%)であった。対象者の「個別避難計画」を把握している者は,避難訓練の実施などに活用していた。個別避難計画の策定への参画内容として,介護支援専門員との情報共有が挙げられた。「個別避難計画」,「避難行動要支援者」,「福祉避難所」の各用語を説明できる程度に知っている者の割合は,知識習得の機会があり,被災者支援経験があり,理学療法士経験年数が長いと高かった。一方,自身の被災・避難経験の有無とは関連が認められなかった。
結論 災害時の避難者対応に関する用語(「個別避難計画」,「避難行動要支援者」,「福祉避難所」)を説明できる程度に知っている理学療法士の割合は4.1–12.3%であった。知識習得の機会を得られるよう,体系化された研修会の開催などが有益である可能性がある。