2025 年 72 巻 6 号 p. 408-418
目的 保健師には,健康課題の改善・解決のため,エビデンスに基づき保健事業を導入(事業実装)する力量が求められている。本研究の目的は保健師の事業実装力に関連する要因をキャリアレベル群別に明らかにすることである。
方法 都道府県・保健所設置市の保健師を対象に自記式質問紙調査を行った。対象を保健師としての経験年数や役職の有無に基づき,保健師経験5年以下:新任期群,6年以上役職なし:役職無群,6年以上役職あり:役職有群の,キャリアレベル3群に分けた。従属変数を保健事業実装点検シート(以下,IDAS)得点,独立変数を新規事業化経験・学習経験・横展開の経験・保健師のコンピテンシー尺度得点として単回帰分析を行い,その後単回帰分析において有意であった変数を独立変数として重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。コンピテンシー測定尺度は専門性発展力(PDS),省察的実践力(RPS),研究成果活用力(RUC)を用いた。
結果 配布数966のうち有効回答数は702,有効回答率は72.7%であり,キャリアレベル群別の人数と全体に占める割合は,新任期群が87人(12.4%),役職無群が192人(27.4%),役職有群が423人(60.3%)であった。IDAS得点の平均点は全体が115.7点,新任期群107.6点,役職無群111.3点,役職有群119.6点と,役職有群が最も高かった。重回帰分析の結果,新任期群のIDAS得点に〈RPS得点〉(β=0.450),〈PDS得点〉(β=0.336),〈横展開の重要性認識〉(β=0.233)が,役職無群のIDAS得点に〈RUC得点〉(β=0.305),〈横展開の現状実施認識〉(β=0.237)が,役職有群のIDAS得点に〈RUC得点〉(β=0.225),〈PDS得点〉(β=0.219),〈RPS得点〉(β=0.206)が,関連していた。
結論 保健師の事業実装力向上には,新任期群では,リフレクションの実施,専門的知識・技術の向上,事業実装の重要性の理解の向上が,役職無群では,最新の研究の知見等の情報収集・吟味・活用が,役職有群では,保健師経験を経て培われた能力の継続的な向上が,それぞれ重要であることが示唆された。この結果に基づき,キャリアレベル別の特徴に応じた事業実装研修の実施,および実践や自己の活動を省察し習得度を点検する機会の設置が必要であると考えられる。