論文ID: 24-009
目的 タバコパッケージの警告表示について,喫煙者の認識を画像の有無およびデザイン別に明らかにし,我が国の警告表示のあり方を検討することを目的とする。
方法 我が国における喫煙状況や喫煙対策についての現状を知るため実施されたJASTIS研究2020年2~3月の調査データに回答した15~74歳の喫煙者2,372人を対象とした。2020年4月以前の旧パッケージ(文字3割),現行パッケージ(文字5割),および日本では使用されたことがないタバコの害を伝える画像(受動喫煙被害を受ける“乳児”,喫煙で汚れた“肺”,禁煙を促す“女の子”の画像)を含む3種の合計5つのパッケージについて,「若者に喫煙開始を思いとどまらせる効果がどれくらいあると思いますか」「警告表示を目にした場合に,どれくらい禁煙したいと思わせる効果があると思いますか」「喫煙の危険性を伝える効果がどれくらいあると思いますか」「見た人に過度に不快感を与えると思いますか」の4点を質問し,それぞれの質問に対して,5つのパッケージでの認識を比較した。回答は,「1.まったく効果がない~5.きわめて効果がある」あるいは「1.まったくそう思わない~5.強くそう思う」の5件法で求め,それぞれの質問に対する回答に対してt検定を行った。
結果 t検定の結果,「若者の喫煙開始を思いとどまらせる効果」「禁煙したいと思わせる効果」「喫煙の危険性を伝える効果」において「効果あり(きわめて・やや)」と認識した喫煙者は,文字3割と文字5割では差がなく(P=0.740–0.987),乳児や肺の画像を含むパッケージと文字のみのパッケージでは有意な差があった(P<0.01)。「過度に不快感を与える」において「そう思う(やや,強く)」と認識した喫煙者は,文字のみのパッケージと乳児や肺の画像を含むパッケージでは有意な差が見られた(P<0.01)。
結論 乳児や肺を使用した画像付き警告表示は,喫煙の危険性を伝え,喫煙者の禁煙行動や禁煙意思を生じさせる効果,非喫煙者の喫煙開始を防ぐ効果があると喫煙者によって認識されていた。我が国においても,「たばこ規制枠組条約」に基づいて諸外国ですでに導入されている画像付き警告表示を導入すべきである。