ヒューマンファクターズ
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研究論文
労働災害防止対策のセーフティⅠ問題観点からの評価
重森 雅嘉
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ジャーナル オープンアクセス

2025 年 30 巻 1 号 p. 6-14

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抄録
セーフティⅠは,発生した労働災害から「うまく行かなくなる可能性」を排除することにより安全を目指すものである。しかし,セーフティⅠを目指しても安全を作り出すことはできない。なぜならば,セーフティⅠには2つの致命的な欠陥があるからである。第一に,私たちは「うまく行かなくなる可能性」をすべて想定することはできず,そのため職場からリスクを完全に排除することはできない(完璧性の問題)。第二に,仮にすべてを想定できたとしても有限の時間の中ですべての可能性を考慮した手続きに従って仕事をすることは不可能である(効率性の問題)。本研究は,実際の労働災害防止対策の中にこのようなセーフティⅠの問題が含まれているかどうかを明らかにすることを目的として行なった。このため,5つの化学工場のそれぞれで起こった10件の労働災害に対する対策を,管理者と安全担当者が完璧性と効率性の観点から評価した。その結果,ほとんどの対策に問題があることがわかった。これらの結果を踏まえ,将来の産業安全のあり方について検討した。
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