Journal of the Japan Petroleum Institute
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総合論文 −特集「マイクロ波化学プロセス技術の現在と明日」−
マイクロ波水蒸気改質による水素製造技術
福島 英沖
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2018 年 61 巻 2 号 p. 106-112

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抄録

当研究所で開発したシングルモード方式のキャビティと新規なマイクロ波吸収材を用いることで,100 ℃/sという極めて高速な加熱方法を見出した。この技術を用いてエタノールの水蒸気改質を行い,マイクロ波改質法の優位性について検証した。その結果,マイクロ波照射下では触媒層のみが選択的に加熱され,従来法よりも低温で触媒を活性化できることが分かった。改質温度500 ℃で転化率100 %,水素濃度70 %,エタノール1モルから最大4.8モルの水素が得られた。また,エタノール量を増やしても改質性能を維持でき,実用レベルに近いガス空間速度SV=130,000 h−1が得られた。特にマイクロ波を用いると,低温域で平衡濃度計算値よりも著しく高い水素濃度が得られ,従来のプロセスではあり得ない低温改質が実現でき,熱的非平衡状態の存在が示唆された。さらに,マイクロ波照射下では活性化エネルギーが低下し,反応が促進することにより,従来法よりも低温 · 短時間で改質が行われたと推察された。マイクロ波を利用した水素製造法は,始動性や負荷応答性に優れ,低温改質,高効率,小型軽量化など,従来にない多くの優れた特徴を持ち,将来の新しい改質技術として燃料電池等への応用が期待できる。

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© 2018 公益社団法人石油学会
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