Journal of the Japan Petroleum Institute
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一般論文 −特集「マイクロ波化学プロセス技術の現在と明日」−
フタロシアニン金属錯体のマイクロ波加熱合成 —収率とマイクロ波照射による最高到達温度との関係—
安部 寛太片野 聡太田 和親
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2018 年 61 巻 2 号 p. 140-149

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抄録

多官能性フタロシアニン金属錯体は,導電性,エレクトロクロミズムおよび液晶形成などの多くの用途に非常に有用であるため,近年,フタロシアニン誘導体の合成が非常に興味を引いている。以前我々は,フタロシアニン銅錯体のマイクロ波加熱による合成において,テンプレート効果が観察されなかったことに気づいた。これは,添加金属塩の誘電損失係数に起因すると考えた。しかし,希薄溶液中の金属塩の誘電損失係数を直接測定することは非常に困難である。基礎的なマイクロ波理論によると,マイクロ波照射により得られる熱量は誘電損失係数に比例するため,マイクロ波照射により到達した金属塩を含む溶液の最高温度は誘電損失係数の間接的な指標となり得ると考えられる。そこで本研究では,12種類の金属塩(MCl2, MSO4, M(OAc)2: M=Co,Ni,Cu,Zn)をそれぞれ含むグリセリン溶液にマイクロ波を照射し,マイクロ波照射によって到達した溶液の最高温度を各金属塩について測定した。次に,これらの12種類の金属塩を用いて,マイクロ波加熱により対応するフタロシアニン金属錯体(C8S)8PcM(M=Co,Ni,Cu,Zn)を合成した。その結果,大変興味深いことに,マイクロ波加熱による(C8S)8PcMの合成は,最高到達温度を与えた金属塩(反応種)の順番に,(C8S)8PcMの最高収率も与えることを見出した。これは,今後,マイクロ波加熱を用いた有機金属錯体の合成において重要な指針となるだろう。

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© 2018 公益社団法人石油学会
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