2018 年 61 巻 2 号 p. 156-162
第3のエネルギー伝達方法MTT(マイクロ波伝送技術: Microwave Transmission Technology)により,化学プラントのデザインを革新させ,マイクロ波プロセスが化学プラントのグローバルスタンダードになりうると考える。1980年代からマイクロ波プロセスは,省エネ,高効率,コンパクトの優位性が唱えられながら,2014年まで産業化が達成されてこなかった。マイクロ波化学(株)は,物理,電磁気,化学,エンジニアリングなどの人材を集め,プラットフォーム技術を構築し,会社設立から10年間でマイクロ波化学プロセスの実証と多分野展開の戦略をとってきた。2014年3月,世界で初めてマイクロ波化学プロセスを用いた化成品製造プラントを大阪湾岸地区に立ち上げ,2017年3月には,マイクロ波化学(株)と太陽化学(株)の合弁会社によるショ糖脂肪酸エステルプラントを三重県四日市に竣工した。本稿では,マイクロ波反応系の構築とマイクロ波反応器デザイン,つまりスケールアップ技術に加え,マイクロ波プロセスのグローバルスタンダード化を目指した事業化を紹介する。