2018 年 61 巻 2 号 p. 163-170
従来の内部加熱方式で用いられるマグネトロンに代表される電子管により励振されるマイクロ波は周波数安定度や位相コヒーレンスが低いために,空間内における電力合成が困難であることから,これら加熱炉内の温度分布の制御が難しいという課題があった。半導体マイクロ波電源によって励振されるマイクロ波は位相安定性 · 周波数安定性に優れているため,複数ポートを設け,各々から出力されるマイクロ波の相対位相を変化させることにより,アプリケータ内部の加熱分布を制御できると考えられ,これまでに様々な検討がなされてきている。筆者らはこれまで半導体マイクロ波電源を用いた位相制御による集中加熱の検討を行い,その実現性を示してきた。本報告では,複数のGaN増幅器モジュールを備えた半導体マイクロ波電源を用い,それら半導体マイクロ波電源から出力されるマイクロ波の位相制御によって,局所的に加熱が集中する領域を作り出し,その領域において化学反応を促進する実験を行ったので報告する。