2026 年 69 巻 3 号 p. 139-146
トルエン/メチルシクロヘキサン(TOL/MCH)系液体有機水素キャリア(LOHC)は,既存インフラを活用しつつ水素を高密度かつ安全に貯蔵 · 輸送できる有望技術である。一方で,TOL水素化とMCH脱水素を担う担持Pt触媒は,貴金属使用量,被毒 · 炭素析出による失活,反応速度と耐久性の両立が普及のボトルネックとなる。本総説では,両反応に関する近年の担持Pt触媒研究を整理し,活性 · 選択性 · 耐久性 · 省貴金属化の観点から設計指針を抽出する。特に,単原子合金(single-atom alloy, SAA)に注目し,卑金属表面へのPt単原子固定化によるPt利用効率の向上,卑金属サイトでの基質吸着とPtサイトでのH2活性化の協奏,サブナノ卑金属層による炭素析出抑制および生成物被毒緩和,さらに分光 · XAFS · 計算化学を組み合わせた活性点同定の進展を概説する。最後に,低Pt量でも高性能を実現する「単原子-卑金属アンサンブル」設計の可能性と今後の課題を議論する。