環境社会学研究
Online ISSN : 2434-0618
特集 環境社会学と「社会運動」研究の接点─いま環境運動研究が問うべきこと─
地域の自然とともに生きる社会づくりの当事者研究――都市近郊における里山ガバナンスの平成史――
松村 正治
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2018 年 24 巻 p. 38-57

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抄録

本稿は,地域の自然とともに自由に生きられる社会に向けて筆者が積み重ねてきた研究と実践を,個人史に沿って記述したものである。その中心は,みずからが住む都市近郊の里山を適切に保全・活用できる環境ガバナンスの構築に向けて考え,行動してきた平成期の道筋である。

環境の時代・市民の時代ともいえる1990年代,市民参加による里山保全活動が全国的に拡大し,当時は新しいコモンズ再生の動きとして期待された。しかし,2000年代以降,行政とNPOとの協働という名の新自由主義的な制度改革のなかに,その活動の勢いは吸収されていった。2010年代のポスト3.11の動向としては,里山の資源や空間をいかして仕事をつくる同時多発的な動きが注目される。この自律的でオルタナティブな生き方を志向する動きの先に,めざすべき社会を構想できると筆者は仮説を立て,検証するための社会実践をおこなっている。

日本の環境社会学には,地域のリアリティにもとづいて解決論を組み立てるという方法論上の特徴がある。このアプローチはガバナンス時代に適合的で,平成の時代を下るにつれて必要性が一層高まった。筆者の取り組みもまた,こうした系譜に正統に位置づけられるだろう。

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