2023 年 29 巻 p. 22-37
企業があらゆる側面で高い社会・環境パフォーマンスを求められる状況において,環境社会学はそれをどのように主題化し,分析し,また,実践にかかわっていくことができるのか,再考する必要がある。本稿ではB Corp運動を対象として,ステークホルダー志向の企業を認証するシステムの可能性と課題を探った。B Corp認証は,5つのカテゴリ(ガバナンス,ワーカー,コミュニティ,環境,カスタマー)で企業の社会・環境パフォーマンスを包括的かつ厳格な基準のもとで評価し,認証する。B Corpが形成するコミュニティやパートナーシップは,企業同士の価値観の共有と経済取引を一体的に成立させる行動であり,その集積は広く社会にポジティブな影響を波及させる可能性がある。一方で,グローバル企業の認証取得や認証離脱にかかわる問題など,B Corp運動のスケールアップに伴う課題も浮上している。後発ながら,日本でも戦略的に多様な人びとのかかわりを重視したプロセス設計のもとでキーパーソンのネットワークが形成され,B Corpの理念を体現するコミュニティが形成されはじめている。日本のB Corp運動の研究は黎明期であり,潜在的には多岐にわたる研究課題を設定する余地がある。まずはB Corpを幅広く社会科学の研究対象として主題化することが必要である。