日本泌尿器科学会雑誌
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原著
前立腺肥大症に対してデュタステリド投与後に前立腺生検を施行した症例の臨床病理学的検討
遠藤 匠神谷 直人矢野 仁岡 了李 芳菁内海 孝信上島 修一西見 大輔高波 眞佐治蛭田 啓之鈴木 啓悦
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2015 年 106 巻 3 号 p. 156-162

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抄録

(目的) デュタステリドは前立腺肥大症に対して本邦で初めて使用可能となった5α還元酵素阻害薬であり,現在広く用いられている.しかしながら,デュタステリド投与により前立腺癌をマスクすることが懸念される.今回我々は,デュタステリド投与中に前立腺癌が疑われ,前立腺生検を施行した症例について検討した.

(対象と方法) 2010年1月から2013年6月の間に,3カ月以上デュタステリドが投与された312症例のうち,PSAの異常高値や継続的上昇ないし一時低下するも再上昇したため前立腺癌が疑われ,前立腺生検を施行した6症例を対象とし,臨床病理学的検討を行った.

(結果) デュタステリド投与開始時の平均年齢,投与期間,前立腺容積,PSA値,PSA densityはそれぞれ,69.5±5.9歳,14.1±7.4カ月,70.4±30.7ml,7.7±3.3ng/ml,0.098±0.045ng/ml/cm3であった.また,生検施行時のPSA値は5.4±2.7ng/mlだった.6症例中3症例で前立腺癌が検出された.前立腺癌非検出例では経時的なPSA値の上昇を認めなかった.

(結論) 前立腺癌検出全症例において,早期の段階で前立腺癌を検出することができ,治療介入のタイミングが遅れた症例は認めなかった.デュタステリド投与後も注意深くPSA値の変動パターンを確認することが重要であると考えられた.

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© 2015 一般社団法人 日本泌尿器科学会
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