2015 年 106 巻 3 号 p. 163-171
(目的) 敗血症性DICを合併した尿管結石による閉塞性腎盂腎炎はときに致命的となる.当院では緊急腎盂ドレナージとDIC治療を行っているが,それによって予後が改善するのか,また,遺伝子組み換えトロンボモジュリン(rTM)の導入が有効であるのかを治療成績をもとに検討した.
(対象と方法) 対象は2006年9月から2013年5月に当科に尿管結石による閉塞性腎盂腎炎の診断で入院し,急性期DICスコア4点以上でDIC治療薬を投与した31例である.患者の背景と治療結果を評価し,患者をrTMの使用開始前と開始後の患者群を2群に分類し,臨床経過を比較した.
(結果) 対象31例のうち,30例がドレナージ可能であった.敗血症性ショックの患者が87.1%を占めたが,死亡例は1例(3.2%)であった.rTM使用群が22例,rTM不使用群が9例であった.両群の年齢以外の患者背景に有意差を認めなかった.rTM使用群では血小板数,血清クレアチニン値,SOFAスコアが有意に早期改善した(p=0.017,0.0038,及び0.0006).
(結論) 当院では敗血症性DICを合併した尿管結石による閉塞性腎盂腎炎に対し,腎盂ドレナージとDIC治療を行い,高い救命率を得た.また,rTMを導入し以前の症例よりも凝固異常に関連した臓器不全を早期に改善させ,敗血症の致死的状況からの早期離脱が可能であった.