2015 年 106 巻 3 号 p. 172-177
(目的) LUTSを有する男性において,症状が包括的健康関連QOLに及ぼす影響を検討した.
(対象と方法) 2003年から2011年の間に,LUTSを主訴に泌尿器科外来を受診した男性患者567例に対し,IPSSとUCLA PCIによる尿失禁頻度,MOS 36-Item Short-Form Health Survey(SF-36)による包括的健康関連QOLの調査を行った.併存疾患のない230例を対象とし,Pearson積率相関分析と重回帰分析を用いて,LUTSの各症状がSF-36より算出した8領域の下位尺度得点に与える影響を検討した.
(結果) 単変量解析の結果,尿失禁頻度はSF-36における8つの下位尺度得点全てと有意な相関を示し,その他尿意切迫感,夜間頻尿,腹圧排尿の項目値が,複数のSF-36下位尺度得点と有意な相関を示した.多変量解析の結果,LUTSが包括的健康関連QOLに及ぼす寄与度は10%程度であった.包括的健康関連QOLに及ぼす影響が最も大きいと考えられた症状は尿失禁であり,SF-36の7領域の下位尺度得点に有意な影響を与えていた.その他,夜間頻尿はSF-36の4領域,腹圧排尿は2領域,尿意切迫感は1領域で,健康関連QOLを有意に悪化させていた.
(結語) LUTSの中で尿失禁と夜間頻尿,腹圧排尿が,包括的健康関連QOLを悪化させる症状として重要であった.