2015 年 106 巻 3 号 p. 185-189
症例は67歳男性.2010年4月に直腸癌に対し直腸低位前方切除術施行.2011年4月に局所再発のため直腸切除術を施行された.病理学的所見では直腸癌術後局所再発,左閉鎖腔腸管浸潤あり,断端陽性であったため,2011年6月から術後補助化学療法を6カ月間施行した.その後再発無く経過していたが,2013年4月のCTにて直径23mmの右副腎腫瘍を認めた.同年11月には直径46mmと増大傾向であり,PET CTでは同部位に高集積を認めた.血清CEAは2013年4月:6.1ng/ml,7月:8.1ng/ml,11月:10.4ng/mlと急激な増加傾向であった.ACTH,副腎系ホルモンの数値は全て正常範囲内であり,機能性腫瘍は否定的であった.
腫瘍サイズの急激な増大とCEA上昇のため,直腸原発の異時性,孤立性,転移性副腎腫瘍を疑い,2014年1月腹腔鏡下右副腎摘出術を施行した.病理学的診断は(adenocarcinoma, compatible with metastasis of rectal cancer)であり直腸癌の転移であった.手術後6カ月経過しているが,血清CEAは正常範囲内で推移し,画像上,再発,転移等の所見を認めていない.