2017 年 108 巻 1 号 p. 24-29
(目的) 閉経前女性の単純性尿路感染症における複数菌検出症例について中間尿培養結果を集計し,対応を検討することを目的とした.
(対象と方法) 2006年4月から2014年12月までに当科を受診した18~49歳までの女性患者が対象.臨床症状から単純性膀胱炎もしくは単純性腎盂腎炎と診断され,中間尿培養が提出された375検体について解析した.
(結果) 375検体中,尿培養陽性検体は211検体であった.そのうち単一菌が検出されたのは184検体(87.2%)で,複数菌検体は27検体(12.8%)であった.複数菌検体において単純性尿路感染症の有意菌と会陰部の皮膚・粘膜常在菌の重複が27検体中20検体(74.1%)で最も多かった.次いで常在菌同士の重複が6検体(22.2%),有意菌同士は1検体(3.7%)であった.観察期間中に尿路感染の再燃もしくは,その後の検索で排尿障害が判明した症例は複数菌検出群27例中6例(22.2%)であり,単一菌検出群の17例(9.2%)と比較して統計学的に有意差をもって多かった(p=0.043).
(結論) 単純性尿路感染において複数菌が検出された場合に有意菌と会陰部皮膚・粘膜常在菌の組み合わせが最も多い事が確認された.この場合には有意菌のみを治療対象としてよいと考えられた.複数菌検出症例では感染再燃のリスクが高く,また複雑性尿路感染の検索を考慮する必要があると思われた.