抄録
全身で46の筋モデルと14節の剛体リンク系からなる3次元神経筋骨格モデルを基本として大腰筋の有無と脊柱響曲の有無とを組み合わせた4種類の歩行モデルを構築し,各モデルについて歩行運動の計算機シミュレーションを行った.得られた運動パターンは各モデルごとで顕著な相違はなく,むしろ移動仕事率や筋負担などの生体内負荷は大腰筋や脊柱響曲がないモデルの方が少なかった.しかしながら,歩行運動の途中で骨盤節に外力を作用させるシミュレーション実験を行った結果,脊柱弩曲と大腰筋がある通常の筋骨格モデルが最も安定した持続歩行を実現できた.大腰筋の機能は静的な姿勢支持や運動の効率性よりも動的な運動の安定性の向上に寄与していると推察される.