2024 年 115 巻 1 号 p. 28-32
症例は41歳男性.肉眼的血尿のため前医を受診し,超音波検査で尿膜管腫瘍が疑われたため当科紹介となった.MRIでも膀胱頂部に腫瘍性病変を確認し,経尿道的膀胱腫瘍切除術を施行した.大腸癌の組織型に類似した腺癌であり,発生部位と併せて尿膜管癌の診断となった.CTで多発肺転移を認め,CEAは116ng/mLと高値であったため,大腸癌のレジメンに順じmFOLFOX6を開始とした.化学療法開始から6カ月経過し転移巣の縮小とCEAの低下を認めたため,腹腔鏡補助下尿膜管・膀胱部分切除,骨盤内リンパ節郭清を施行した.病理診断では切除断端陰性であったが,残存する腫瘍組織を認め,多発肺転移も伴うことから術後も化学療法継続の方針とした.尿膜管癌については標準的な化学療法が確立されていないが,大腸癌に類似した組織型であることからFOLFOXが有効であると報告されている.今回我々は尿膜管癌,多発肺転移に対してmFOLFOX6が奏効した例を経験したので報告する.