日本泌尿器科学会雑誌
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症例報告
術中迅速病理診断による精巣部分切除術を考慮した精巣腫瘍の1例
苅部 樹里衣竹島 徹平河原 崇司岩佐 絵連平野 隆之荒木 雄至高本 大路石田 寛明逢坂 公人寺西 淳一湯村 寧上村 博司
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2024 年 115 巻 1 号 p. 33-36

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抄録

症例は35歳男性.不妊治療のため近医受診し,精液検査で無精子症と超音波検査で直径10mmの右精巣腫瘍を指摘された.採血で精巣腫瘍マーカー陰性,MRI検査で右精巣に10mm大の腫瘍と左精巣の萎縮を認めた.不妊症の原因精査中に発見された機能的片側精巣に生じた精巣腫瘍であり,妊孕性温存検討も含め当院を紹介受診した.

右精巣体積は18mL,左精巣体積は3mLと萎縮を認め,血清総テストステロンは2.96ng/mLであった.対側精巣の萎縮を考慮し,精巣部分切除術による術中迅速病理診断を提出したうえで良性腫瘍が疑われた場合は精巣部分切除術で終了,悪性腫瘍が疑われた場合には高位精巣摘除術を行う方針とした.また,不妊治療を検討中であったため,精巣摘除を行う際は摘出精巣の非腫瘍部から精巣内精子採取術を行い,妊孕性温存目的の精子回収・凍結を行う方針とした.手術時の術中迅速病理診断でセミノーマが疑われたため,高位精巣摘除術と精巣内精子採取術を行い十分量の精子を採取し精子凍結を行った.最終病理組織診断はセミノーマであった.退院後の血清総テストステロンは0.32ng/mLと低下あり,テストステロンエナント酸エステル投与を開始した.今後は精巣腫瘍のサーベイランスに加えて,テストステロン補充療法,凍結精子を用いた生殖補助医療を検討している.

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