日本泌尿器科学会雑誌
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前立腺肥大症における内分泌環境
血中性ホルモン濃度の加齢・前立腺サイズとの関係
鈴木 和浩稲葉 繁樹竹内 弘幸竹沢 豊深堀 能立鈴木 孝憲今井 強一山中 英寿本間 誠次郎
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1992 年 83 巻 5 号 p. 664-671

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抄録

前立腺肥大症の発生と増殖に対する内分泌因子の影響を検討するために血中の総テストステロン, 遊離テストステロン, エストラジオールを測定した. 18歳から91歳の健常者154名を対象とした. 59名は直腸診により前立腺のサイズを測定し, クルミ大以下, 小鶏卵大, 鶏卵大以上の3群に分けた.
まず, 性ホルモン濃度の加齢による変動を検討した. 総テストステロンは60歳以後漸減傾向にあり, 遊離テストステロンは加齢に伴い有意に減少した. しかし, エストラジオールは加齢に伴う変動は認めなかった. このため, エストロジェンの優位さを示すエストラジオールのテストステロンに対する比は有意に壮年代以後上昇した.
次に, 性ホルモン濃度と前立腺サイズの関係を検討した. 大きい前立腺のグループでは, 総テストステロンは有意に低く, エストラジオールは有意に高値であったが, 遊離テストステロンは他の群と差が認められなかった. 前立腺のサイズとエストラジオール濃度, およびエストラジオール/テストステロン比は正の相関を示した.
こうしたことは, 加齢に伴い, 特に壮年代以後では, エストロジェン優位な内分泌環境となり, 大きい前立腺をもつ人ではよりエストロジェンが優位である事を示唆していると思われ, われわれは, 前立腺肥大症の発生と増殖を分析する際にはエストロジェンが鍵を握っていると考えた.

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