日本泌尿器科学会雑誌
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遠位型腎尿細管性アシドーシスに伴う尿路結石症に対するアルカリ剤の長期投与の有効性について
山口 誓司小出 卓生宇都宮 正登吉岡 俊昭奥山 明彦
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1993 年 84 巻 4 号 p. 674-679

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抄録

遠位型腎尿細管性アシドーシス (dRTA) に伴う尿路結石症に対する治療としてはアルカリ剤が一般的によく使われているが, 我々は長期アルカリ剤投与による結石再発予防効果について検討したので報告する. 対象は大阪大学泌尿器科で経過観察中のdRTAに伴う尿路結石症患者のうちアルカリ剤投与を開始してから3年以上経過している症例を対象とした. 対象症例は9例で完全型5例, 不完全型4例であり, 評価は治療前後の腹部レントゲン検査により, 結石増大の有無, 結石形成の有無について検討した. 9例中5例に結石の増大や, 形成を認めず有効であったが, アルカリ剤が無効であった4例のうち3例は服薬が不規則な症例であり, 残りの1例は尿路感染の繰り返しにより, 感染結石の形成を来たした症例であった.
dRTAに対するアルカリ剤の投与は尿中クエン酸排泄量の増加, 尿中カルシウム排泄量の低下等により有効であるとの理論的背景は明確にされているが臨床上もdRTAに伴う既存尿路結石の増大予防や新たな結石形成を長期にわたり予防しうることが証明された.

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