日本泌尿器科学会雑誌
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腎盂尿管腫瘍に対する治療の検討
小野 佳成大島 伸一藤田 民夫絹川 常郎加藤 範夫佐橋 正文松浦 治
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1993 年 84 巻 4 号 p. 686-693

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抄録

105例の腎盂尿管腫瘍例を1982年から1991年までに私共の施設で治療した. うち, 81例が移行上皮癌で外科的治癒切除が可能であり, 57例は根治的腎盂尿管摘出術で24例は腎盂尿管全摘出術で, 原発巣の切除を施行し, また, 66例はリンパ節郭清術を, さらに, 高浸潤度腫瘍症例やリンパ節転移症例26例では, adjuvant chemotherapy を施行した. 61例が男性で, 20例は女性であり, 年齢は36歳から86歳, 平均62歳であった. 経過観察期間は4ヵ月から114ヵ月, 平均31ヵ月であった. 81例の5年生存率は67%であった. 深達度別5年生存率はpTis+pTa群で70%, pT1群で91%, pT2群で88%, pT3群で53%, pT4群で27%であった. また, 悪性度別の5年生存率は grade 1群で100%, grade 2群で74%, grade 3群で26%であった. 52例のリンパ節転移なし群で78%, 15例の転移あり群で27%であった. 51例 (61%) では再発はみられておらず, 17例 (21%) では膀胱内再発が手術後中間値8ヵ月でみられ, 15例 (19%) に後腹膜, 肝, 肺, その他の膀胱以外の再発が手術後8ヵ月で観察された. 今回の検討の結果は過去の他の報告と変わらないものであった. 腎盂尿管腫瘍の治療におけるリンパ節郭清や adjuvant chemotherapy に有用性に関する結論は得られなかった. randamization を行った clinical trial の必要性が示唆された.

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