日本泌尿器科学会雑誌
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抗γ-seminoprotein モノクローナル抗体による前立腺組織の免疫組織化学的検討
前立腺癌組織における分化度と免疫染色態度との相関性について
藤野 淡人石田 裕則大堀 理宋 成浩西村 清志遠藤 忠雄小柴 健桑尾 定仁
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1993 年 84 巻 4 号 p. 720-728

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抄録

著者らが作製した抗γ-Smモノクローナル抗体を用いて免疫染色を行い, 未治療前立腺癌38症例を対象に, 染色態度と組織学的分化度との関係について検討した. また, 同時に抗PAPポリクローナル抗体および抗PSAポリクローナル抗体による免疫染色も行い, 比較検討した. 染色態度の評価に際しては, 独自の半定量法を試み, 染色スコアとして算出し各分化度群の平均値を検定した.
抗γ-Sm抗体を用いた免疫染色における染色スコアおよび陰性率 (%Negative) はそれぞれ, 高分化型で6.8±1.8 (M±SD) および0%, 中分化型で4.4±2.4および14%, そして, 低分化型で1.8±2.3および54%であった. 染色スコアに関して, 各分化度群間に有意な差が観察され (p<0.05), 分化度の低下に伴う染色スコアの低下を認めた. 一方, 抗PAP抗体を用いた場合の染色スコアおよび陰性率はそれぞれ, 高分化型で7.1±1.5および0%, 中分化型で6.1±2.5および9%そして, 低分化型で4.3±3.2および30%であった. 染色スコアに関して, 各分化度群間に有意差は認められなかった. 抗PSA抗体を用いた場合での染色スコアおよび陰性率はそれぞれ, 高分化型で7.1±1.5および0%, 中分化型で5.9±2.5および9%, そして, 低分化型で3.8±2.2および10%であった. 染色スコアに関して, 高分化型と中分化型との2群間にのみ有意差 (p<0.05) を認めた.
抗γ-Smモノクローナル抗体は, 前立腺癌の免疫組織化学的評価に際して, 特に中分化型と低分化型の判別能に関して優れていた.

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