日本泌尿器科学会雑誌
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BBNラット膀胱癌の発生初期における細胞表面糖鎖の免疫電顕的観察
松岡 則良
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1993 年 84 巻 4 号 p. 729-737

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抄録

実験的膀胱癌誘発剤である N-butyl-N-(4-hydro-oxybutyl) nitorosamine (以下BBN) 0.05%水溶液をラットに経口投与し, BBN発癌ラットの膀胱被蓋細胞の腔面細胞における糖鎖の発癌過程での経時的変化を種類のレクチン (ConA, UEA-I, PNA, DBA) を使用した電顕免疫組織化学的方法で検討した.
1) BBN投与により, 膀胱腔面細胞膜は8週目より稜部と斑部の区別が困難となり微絨毛の出現を認め, 16週目には多数の徴絨毛が出現した.
2) 正常膀胱粘膜上皮におけるレクチンの結合は, Con Aにおいては不連続な結合パターンを示し, UEA-I, PNA, DBAでは腔面細胞膜の全域にわたり結合が認められた.
3) BBN投与によるレクチン結合は, Con A, PNAでは癌化が進むにつれレクチン結合の増加を認め, Con Aの正常粘膜でみられた不連続な結合パターンは消失していた (極性の消失). UEA-I, DBAではBBN投与による結合パターンの変化は確認できなかった.
以上の結果により, BBN投与による癌化としての細胞膜の形態的変化に加えて, 極性の変化という機能的変化をレクチン結合能より明らかにすることができた.

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