日本泌尿器科学会雑誌
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一側水腎の対側腎発育に及ぼす影響
閉塞解除後の腎発育の変化
太田 章三近田 龍一郎折笠 精一久慈 了坂井 清英金田 隆志池田 成徳阿部 優子
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キーワード: 一側水腎, 腎発育, 細胞増殖
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1993 年 84 巻 4 号 p. 747-756

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抄録

水腎の存在が対側腎発育にどのような影響を及ぼしているかを明らかにするため, 腎が成熟過程にある幼若ラット (体重80~90g) を用いて以下の実験を行った. 一側完全尿管閉塞を作製し, 3日後に閉塞解除, 閉塞腎接摘出, 閉塞継続の3群に分け, その後の対側健腎の発育について腎湿重量, bromodeoxy-uridine (BrdU) labeling index (尿細管細胞増殖の指標, L. I.) を用い観察した. 尚, 0日と3日に sham ope のみを行った群をコントロールとした.
対側健腎の湿重量は, 各群とも閉塞3日目以降の観察期間で, コントロール群より有意な大きさを保ったまま推移した.
閉塞腎摘出群では, 対側腎皮質のL. I. は腎接摘4日 (閉塞7日) 後より急激に上昇した. 閉塞継続群では, 対側腎のL. I. は水腎摘出群より遅れて上昇し, 血流が完全に消失する時点で水腎摘出群と同値になった. 閉塞解除群では, 対側腎のL. I. は水腎の消失にもかかわらず閉塞解除4日目以降コントロール群に比し有意に高値となり, 18日目まで同程度に有意差を保ったまま推移した.
閉塞期間の長さによる対側腎への影響をみるために, 閉塞5日後に同様な検討を行った. この結果, 閉塞5日群は, 閉塞3日群に比べ細胞増殖の程度が低かった.
以上より, 水腎の存在が対側腎の細胞増殖を抑制し, 閉塞期間が短いほうが閉塞解除後の対側健腎の発育 (特に細胞増殖) が良好になることが示唆された.

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