日本泌尿器科学会雑誌
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Stage 1の腎細胞癌症例の予後に及ぼす因子の解析
大西 哲郎町田 豊平増田 富士男飯塚 典男白川 浩波多野 孝史牧野 秀樹
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1993 年 84 巻 4 号 p. 757-762

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抄録

腎被膜内に限局した腎細胞癌 (stage 1) 症例221例を, 術後再発例45例 (他病死1例を除く) と, 術後未再発症例175例に分け, 再発および再発後の生存期間に影響を及ぼす因子に関して解析した.
その結果, 腫瘍側因子中, 再発の危険因子としては, 腫瘍径や組織学的悪性度 (grade) があげられた. さらに, grade に関しては腎摘後の生存率との関連も認められた. また, 患者側因子としては, 体重減少が再発症例に多く認められ, かつ予後との関連が体重減少, 貧血, 赤沈亢進, およびCRPの陽性化に認められた. また, 再発状況からの分析結果, 根治的腎摘後の非再発率は再発後癌死例が, 再発後生存例に比較して低い傾向であったが有意差は認められなかった. また, 転移部位およびその転移個数からの解析結果, 単一臓器, 特に肺転移例において3個以内の転移個数例は, 再発後生存期間が長い傾向であり, しかもこれら症例は原発巣の grade が低い例 (grade I) が多くを占める傾向が認められたことから, grade は術後の転移進展状況, および生存期間にも影響を及ぼす因子と考えられた.

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