日本泌尿器科学会雑誌
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逆流消失後10年以上観察しえた小児VUR症例の腎機能評価
特に逆流性腎症進展早期指標としてのα1-microglobulin の有用性
太田 章三近田 龍一郎坂井 清英久慈 了畠山 孝仁阿部 優子竹田 篤史千田 尚毅折笠 精一
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1996 年 87 巻 11 号 p. 1236-1242

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抄録

(目的) 膀胱尿管逆流 (VUR) 消失後10年以上経過観察しえた小児を対象に, 尿α1-microglobulin (α1m) が逆流性腎症の予後の把握に有用な指標となりうるか否かについて検討した.
(対象・方法) 小児原発性膀胱尿管逆流 (VUR) 症例のうち, VUR消失後10年以上観察しえた25例 (初診時年齢1~10歳 (平均4.6歳), 男児14例・女児11例) を対象とした. 腎機能は逆流消失後2年以降のDMSA腎摂取率, 尿中α1m, albumin を用いて評価した.
(結果)尿α1mの経過を見ると, 高値が持続する例, 一過性に高値を示す例, 正常範囲のまま推移する例が観察された. 経過観察中に尿α1mが高値を示した13例中9例に, 総腎摂取率の低下を認めた. 尿 albumin 高値は7例に認め, その後正常化した2例はいずれも尿α1mが正常であった. 残りの5例はいずれも尿α1m高値であった. 総腎DMSA摂取率の低下, 尿 albumin 値の上昇は, いずれの症例も思春期以降に顕著となった.
(結論) VUR消失後も一部の例では総腎摂取率の低下, 尿 albumin の増加などの腎機能障害が進展することが明らかになった. 尿α1m高値の例は, 思春期以降に腎機能障害の進展が起こることが多く, 尿α1mは逆流性腎症の進展を早期に把握する有用な指標となる可能性が示唆された.

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