日本泌尿器科学会雑誌
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自然歴からみた小児精巣・精索水瘤に対する手術適応
山口 孝則永田 豊春濱砂 良一長田 幸夫
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1996 年 87 巻 11 号 p. 1243-1249

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抄録

(目的) われわれは長期遠隔成績を調査しえた小児精巣・精索水瘤患児について自然歴を中心に検討し, 本症の手術適応についての考察を行った.
(方法) 1978年から1994年までに当科外来を初診し, 平均4.7年の長期にわたって遠隔成績を調査しえた生後5日目から13歳までの患児149例160水瘤を対象にした. 手術適応については穿刺法による功罪, 水瘤の形態, 交通性, 大きさ, 初診時年齢, 精巣の発育の6つの観点からこれを検討した.
(結果) 160水瘤のうち66水瘤 (41%) が穿刺を受けていたが, 穿刺を受けた症例ほど要手術水瘤が増え, 穿刺治癒率はわずか24%であった. また穿刺で治癒する水瘤の大多数は非交通性であった. 形態的には精巣水瘤よりも精索水瘤の方が, 非交通性よりも交通性の方が, また水瘤が大きいほど, 年長児で発生するほど手術を必要とする症例が多かった. また自然治癒までの期間も水瘤が大きいほど, 年長児で発生するほど期間を要した. 精巣の大きさについては正常対象群と比較し, 精巣の発育は良好であった.
(結論) 本症はきわめて自然治癒傾向の強い疾患であり, 今回の検討から本症の手術適応についてはまず鼠径ヘルニア, 停留精巣などの合併例, 幼児期以降の発症で2~3年以上治癒傾向を示さない水瘤, 日常生活に支障をきたすような巨大交通性水瘤などが手術適応になると考えられた.

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