日本泌尿器科学会雑誌
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浸潤性膀胱癌に対する術前化学療法の臨床効果とその評価法について
西阪 誠泰和田 誠次池本 慎一杉村 一誠仲谷 達也堀井 明範山本 啓介岸本 武利河野 学安本 亮二辻野 孝
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1996 年 87 巻 11 号 p. 1250-1257

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抄録

(目的) 浸潤性膀胱癌に対して術前化学療法としてM-VACを行い, その治療効果および臨床経過について検討した.
(対象と方法) 対象は全身状態が良好で高度の合併症がなく, M-VACの full dose の投与が可能であった患者16例である. 男性14例, 女性2例, 年齢は45歳から77歳, 平均59.4歳であった.
(結果) 化学療法施行回数は1~3コース, 平均1.7コースであった. 12例に膀胱全摘術が施行され, 4例は膀胱温存であった. 臨床評価はCT, MRI, エコー, 細胞診, 膀胱鏡, random biopsy で行い, PR以上の奏効率は62.5%であった. 手術標本による病理組織学的評価では奏効率は68.8%であり, 16例中5例 (31.3%) に評価の相違を認めた. また, 膀胱温存を行った4例中2例に早期再発が見られ, それらは grade 3あるいは多発性腫瘍であった.
(結論) 術前化学療法の近接効果は高率に認められたが, その指針, 評価法, 評価時期についてさらなる検討が必要で, また術前化学療法および膀胱温存の適格例の検討についても新たな方向性が必要と考えられた.

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