日本泌尿器科学会雑誌
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N-Butyl-N-(4-hydroxybutyl) nitrosamine (BBN) によるラットの膀胱癌発生における組織中および血中ポリアミン値の検討
谷口 光宏蓑島 謙一竹内 敏視酒井 俊助出口 隆河田 幸道佐藤 久美子原 明
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キーワード: ポリアミン, 膀胱癌, BBN
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1997 年 88 巻 7 号 p. 658-663

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抄録

(背景と目的) ポリアミンは細胞増殖因子と考えられている. N-butyl-N-(4-hydroxybutyl) nitrosamine (以下BBNと略) 誘発ラット膀胱癌モデルを用い, 膀胱癌の発癌過程におけるポリアミンの関与につき検討した.
(対象と方法) 生後5週齢 Fischer 344系雄ラットに, 飲用水として0.05%BBNを20週まで投与し膀胱癌を発生させ, 膀胱組織中及び血中の3つのポリアミン, ジアミン, スペルミジン, スペルミンを分別定量した.
(結果) BBNにより投与8週目には5匹中4匹に過形成が, 12週目には5匹中2匹に乳頭腫が, 20週目までにはすべてに移行上皮癌が発生した. 膀胱組織中および血中ともに, 総ポリアミン値はBBN投与群が水道水のみを飲用した対照群に比べ有意に高値であった. 総ポリアミンの高値は, 3つのポリアミンのうち主にスペルミジンの増加によるものであり, 腫瘍の発生に一致して増加がみられた.
(結論) ポリアミンは膀胱癌発生およびその進展の指標の一つとして利用できる可能性が示唆された.

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