日本泌尿器科学会雑誌
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Potter sequence 剖検例における腎・肺の病理学的検討
島田 憲次細川 尚三松本 富美松本 成史
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キーワード: 腎病理, 肺病理
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1997 年 88 巻 7 号 p. 664-669

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抄録

(目的) 胎児期に羊水過少のため特有の顔貌と四肢の変形を示し, 周産期に肺低形成による呼吸不全で死亡する病態を Potter sequence (PS) と呼ぶ. 最近の新生児医療の進歩により, 出生前にPSと考えられた症例にもその臨床経過に違いがみられることから, このような病態にもさまざまな移行型が存在するのではないかと推測し, PSとして剖検が加えられた症例の腎と肺の組織を検討した.
(対象・方法) 剖検時にPSの臨床像を示した32例を対象に, 腎については糸球体数 (RGC) と腎異形成度 (1-4) を調べた. 肺は肺胞分岐数 (RAC) と肺/体重比 (L/B ratio) を用い検討した.
(結果) 基礎疾患としては腎形成不全22例, 尿路閉塞7例, 嚢胞腎3例であった. 腎異形成度をみると8例10腎ではネフロンが一部に形成された grade-2 を示した. これらの腎でRGCを調べると, 正常児に比べて糸球体の数は遙かに少なかった. L/B ratio をみると25腎 (85%) が肺低形成の基準を満たしており, 残り4例も正常に比べて遙かに低値を示した. RACが判定できた22/24例では正常に比べて低い値を示した. 異形成度が grade-2の症例では他と比べて肺は大きく成長していた.
(結論) 今回の検討から, いわゆるPSは spectrum disease であり, 腎・肺の組織学的所見から様々な移行型が存在することが示された.

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